色鮮やかなストライプがその色を変化させながらゆっくりと幅を広げ、画面を埋めてゆく。武藤努「Kinetic color bar」(2008)
NTTが運営する東京・初台のインターコミュニケーション・センター(以下、ICC)では、様々なメディア・アート作品やプロジェクトを年度を通じて紹介する「オープン・スペース」を毎年無料で公開している。このスペースはICCの活動理念に基づき、先進的な芸術表現とコミュニケーション文化の可能性を見いだすような空間となっている。5月より開催されている今年の「オープン・スペース2009」はどのような内容なのだろうか。
回転する曲芸師がストロボの光によって、コマ撮りアニメのように見える作品。グレゴリー・バーサミアン「ジャグラー」1997年
今年のオープン・スペースは大きく分けて、4つの展示で構成されている。メディア・アートを分かりやすく紹介する10作品の展示、今後期待される新進アーティスト、クリエイターによる作品やプロジェクトを紹介する「エマージェンシーズ!」、図書室やウェブ上でメディア・アートの歴史を閲覧することのできる「アーカイブ」、そして、今年より新たに始まったアートとサイエンスを横断する作品やプロジェクトをテーマ展示として紹介する「ミッションG:地球を知覚せよ!」。出品されている作品はどれも実際に鑑賞者自身が操作したり動くことで反応するもの、視覚的なインパクトの強いものなど、多くの人がメディア・アートを楽しみながら学べるように選定されている。
ICCの受付近くに展示された山口崇洋による「アーバナイズド・タイプフェイス:Shibuya08-09」では、好きなアルファベットをキーボードで入力すると、その文字が見慣れないフォントでスクリーンに映し出される。実はこれは、渋谷区全域を自転車で移動したGPSの軌跡によって作り出されたフォント。都市の名前が付けられたフォントを目にすることはあるが、この作品で都市を構成する街路によってデザインされた、まさに「Shibuyaフォント」を見ることができるのだ。
メキシコ系カナダ人アーティストのラファエル・ロサノ=ヘメルによる「フリークエンシー&ヴォリューム」は、ラジオやテレビ放送、無線などの様々な電波を鑑賞者の動きによって受信する作品。作品空間に入ると、まずスクリーンに自分の影が投影され、影を左右に移動することで周波数のチューニングを、前後の動きで影の大きさを変えることで音声のボリュームをコントロールすることができる。広帯域の電波を受信するのは、12台のAM/FMラジオと屋外にあるテレビのアンテナ。スクリーンに映し出された鑑賞者の影がバラバラな動きを見せつつ、様々な音量でラジオやテレビの音が飛び交う。視覚的にも聴覚的にも刺激的な、鑑賞者自身で生み出される不思議な空間となっていた。
山口崇洋「Urbanized Typeface: Shibuya08-09」2008/09年 撮影:前田岳男(左)ラファエル・ロサノ=ヘメル「フリークエンシー&ヴォリューム」2003年 撮影:木奥恵三(右)
テーマ展示である「ミッションG:地球を知覚せよ!」では、アートとサイエンスを横断する領域における地球上のさまざまなデータをセンシングし、可視化していく5つのプロジェクトを紹介している。21世紀の最初の10年が過ぎようとしている現在、地球規模のネットワークによって私たちの日常で世界の様々な情報が共有可能であることが理解できるコーナーなのではないだろうか。
5つのプロジェクトのひとつ、鳴川肇による「オーサグラフ:ISSロングターム・トラッキング」では、「オーサグラフ」という表記法を用いて、大陸の面積や形を歪ませずに正確な世界地図を描いている。当たり前だと思っていた世界地図が新しい形で提示され、今までとは少し違う地理感覚を味わえるだろう。また展示公開中には、地球を90分で一周するISS国際宇宙ステーションの軌道データを取り込み、リアルタイムで描かれた軌跡も見ることができる。

鳴川肇「オーサグラフ」(2009)、オーサグラフにより六大陸が分断されず面積の歪みなしに表示される矩形世界地図。
現在ICCでは、moonlinxでイベントレポートを連載中のスズキユウリ氏や、先日ご紹介した真鍋大度氏などが参加しているキッズ・プログラム「プレイフルラーニング」も開催中。館内では、子どもだけでなく大人も作品に触れ、大いに楽しんでいるようだった。単に作品を"見る"だけではない楽しみ方が出来るのは、メディア・アートの特徴のひとつだと言えるだろう。新たな表現を体験しに、休日はICCへ足を運んでみてはいかがだろうか。
「オープン・スペース2009」
会期:
2009年5月16日(土)〜2010年2月28日(日)
月曜休館(月曜日が祝日の場合翌日,ただし8月31日は開館)年末年始(12/28―1/4), 保守点検日 (8/2, 2/14)
会場:
NTTインターコミュニケーション・センター[ICC]
住所:
東京都新宿区西新宿3-20-2 東京オペラシティタワー4階
参加作家:
浅野耕平、岩井俊雄、クワクボリョウタ、JODI、グレゴリー・バーサミアン、佐藤哲至+坂本洋一、ダブルネガティヴスアーキテクチャー、鳴川肇、パクト・システムズ、Pachube + M.K.I.、藤木淳、武藤努、村上祐資+第50次日本南極地域観測隊+国立極地研究所、山口崇洋、ラファエル・ロサノ=ヘメル
※ICCキッズ・プログラム「プレイフル・ラーニング たのしむ∩まなぶ」は2009年7月11日(土)〜8月31日(月)まで同時開催中。













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