Esther Teichmann「Untitled from Mythologies」
日本でもマラソンやコンサートなどの様々なイベントを通じて頻繁に行われるようになったチャリティ活動。最近では、カリブ海の国ハイチを襲った大地震で被災した人々を救済する為に、国内のクラブのいくつかで若者達によって募金箱が設置された。本日ご紹介する「Gifted(ギフテッド)」は、チャリティ活動の先進国とも言えるイギリスで2008年から年一度のペースで開催されているチャリティ・オークションだ。そこでは「誰かを助けたい」と願う大勢の人々が、アートを通じて彼らの活動を支えている。Giftedのメンバーであるピーター・スティットソンさんにお話を伺いながら、アーティスト達から提供された素晴らしい作品と人々の笑顔をご紹介していきたい。
—まずは「Gifted」について、そしてピーターさんが関わるようになった経緯について教えて頂けますか?
スティットソン Giftedは若手から著名なアーティストまでの作品を扱うチャリティ・アート・オークションで、収益金の100%は癌と戦う子供達を支援する「ティーンエイジ・キャンサー・トラスト」と様々な問題を抱える子供達を支援する「キッズ・カンパニー」という二つのチャリティ団体に寄付されています。昨年11月に第2回目となるオークションが開催されましたが、第1回目は父親を癌で失った不動産業者の男性によって主催されました。彼は元々アート愛好家だったのですが、父親が闘病中に過ごしていた癌患者のための施設になんとかして寄付をしたいと思い、このチャリティ・オークションを開催したのです。私は第1回目から関わっていますが、彼と知り合ったのは、私が通っていたセント・マーチン美術学校のスクリーンプリント・コースに生徒達からの作品の寄付を求めにやって来た時でした。その後、私がデイズド&コンフューズドという雑誌の元アートディレクターで、多くのアーティスト達との交流があることから、第2回目開催の協力を依頼されたのです。
第二回目の会場に置かれた道案内。
—過去二回のオークションはどのようなものだったのでしょうか?
スティットソン 2008年7月に開催された第1回目のオークションでは40から50点もの作品が競売にかけられました。参加アーティストで最も有名だったのはジュリアン・オピーで、他はほぼ無名のアーティストによるものだったにも関わらず、7,000ポンド(約100万円)もの収益がありました。
昨年11月に開催された第2回目は、ダミアン・ポレインや近藤有稿、日本でも活躍するプシェメク・ソブツキなどの若手アーティストから、ランキン、ジェームス・タレル、ピーター・ブレイクなどの大物まで総勢70名ものアーティストに80点を寄付して頂き、ピカソのプリントを含めた58点を競売にかけました。オークションはロンドンのビジネス街にある会場で開催されたのですが、会場関係者の方も知り合いのビジネスマンを多数招待して下さったので、作品を提供してくれたアーティスト、アート愛好家、各チャリティ団体の関係者とも合わせて150人ものが人が集まり、そのバランスも非常に良かったと思います。オークション前には、来場者がドリンクを飲みながら交流できる時間を設けたり、各チャリティ団体の責任者によるトークショーを行うなどして、私達の活動をより理解してもらえるように努力しました。最終的には来場者の3分の1にあたるおよそ50人もの人が実際に作品を購入して下さり、収益はおよそ16,000ポンド(約240万円)にもなりました。

Fabio Lattanzi Antinori「Trasmutation 001」

Klaus Thymann「Gay Rodeo」

来場者に配布された作品のカタログでは、オークションにかけられる作品のみを紹介。

事前に行われた展示で、写真家ランキンの作品の前でカタログを読む来場者。
—当日は人生初のアート作品を購入された方や、自ら作品を提供していながら別の方の作品を落札したアーティストなどもいて、興奮と活気に満ち溢れていたと伺いました。他にも思い出に残るような出来事はありましたか?
スティットソン 事前に用意していた価格表があったのですが、競売人が値段を見間違えて、600ポンドから競売にかれられるべき作品の金額を60ポンドと言ってしまい、そのまま落札されてしまうという事件がありました。その時は見ていて倒れそうになりましたよ(笑)。結局、落札者に謝罪して600ポンドからオークションをやり直したのですが、なんと落札したのは同じ方だったんです。


笑いあり、感動ありのオークションは2時間にも及んだ。
—素敵なエピソードですね。きっとその方は単にアートを買うだけでなく、「誰かを助けたい」という思いがあったからこそ10倍もの価格で再度落札されたのではないでしょうか。ピーターさん自身はGiftedというこのプロジェクトに対してどのような思いを抱いていらっしゃいますか?
スティットソン 私は癌を克服した人間の一人なので、このプロジェクトの協力を依頼された時は、過去の自分と同じ境遇に立つ人々の手助けをする、というごく自然な目的意識を持つことができました。もし運命というものを信じるのだとしたら、このチャリティとの出会いは私の運命だったと思います。私が心から愛するアートを通じてチャリティをサポートすることができるのは、本当に光栄なことです。今は沢山のアーティスト達と出会い、会話し、彼らが寄付してくれた作品を眺めることを心から楽しんでいます。

Jimmy Turrell「CHANGE」

Haniboi「R.O.C.K.」
落札された瞬間は、思わず笑顔。
—ピーターさんはアートの力を信じますか?
スティットソン もちろんです。このようなプロジェクトを通じて、精神的にも経済的にもアートから多くの価値が見出されるというのは、とても興味深いことです。アートが素晴らしいのは、人々が普段表現するのが難しいと感じている思想や感覚、真実を導くからだと思っています。私にとって、素晴らしいアート作品というものは人生の痛みと喜びを兼ね備えたものです。それは、私達は皆単独の生き物であるけれど、お互いに繋がり、支え合っているように。




オークションに集まった関係者、アート愛好家、アーティスト達。左上の写真の左側がピーター・スティットソン氏。
—最後に、Giftedとして今後の計画を教えて下さい。
スティットソン 今回の開催で多くのことを学びました。次回はアーティストのラインナップのバランスをより良くしたり、招待客をリストを詰めるなどして、オークション全体のエネルギーを向上させたいと思っています。また、いつかロンドン以外の海外の都市でも開催したいと考えていますし、沢山の人々にインスピレーションを与えて、同じようなプロジェクトが増えていけば素晴らしいですね。
(Text:Chiemi Isozaki)
ギフテッド・チャリティ・オークション/Gifted Charity Auction
スティーブン・ギルバート氏によって2008年に設立されたチャリティ・アート・オークション。年に1度、ロンドンで開催されている。第1回目は2008年7月に開催され、収益金の7,000ポンドは癌患者用の施設に寄付された。2009年11月に開催された第2回目のオークションには、若手から著名なアーティストまで総勢70名のアーティストが80点の作品を提供、150人が来場した。収益金は、ティーンエイジ・キャンサー・トラストとキッズ・カンパニーの2つのチャリティ団体に寄付された。













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