moonlinx

next creation and communication moonlinx magazine

HOME

  • HEADLINE
  • SELECTED EVENTS
  • SPECIAL ISSUE
  • INTERVIEW
  • VISUAL FEATURE
  • REVIEW & RECORD

HEADLINE

  • ←
  • ↑
  • →

自分たちが面白いと思うものを発信 — 新しいアートスペースの動き

Art
03/15, 2010

KEYWORD :
0000
3331
AMP cafe
art
Art Center Ongoing
NOW IDeA
PLSMIS
PUBLIC/ IMAGE.3D
VACANT
YUKA CONTEMPORARY
遊戯室
麹町画廊

最近、若い人たちが自ら運営するアートスペースが増えていると感じないだろうか。現代では、テクノロジーの進化もあり、表現の形式は既存の枠では収まりきらないほどの広がりを見せている。そして、表現方法の変化と並行するように多様化するのは、「表現の場」だ。例えば、現在全国的に開催されている「アートプロジェクト」と呼ばれる特定の地域での活動もその一つだが、従来のギャラリーとは異なるアートスペースの登場もまた挙げられる。今回は、ここ5年ほどで都内を中心に新しい動きを見せるアートスペースを紹介しながら、その現状と考えられうる背景をお伝えしたい。

協力:長内綾子(Survivart)、小川希(Art Center Ongoing)


これまでのギャラリー

従来のギャラリーで代表的なものといえば、これまでmoonlinxのインタビューでも言及されることがあった「貸し画廊」もしくは「コマーシャルギャラリー」というシステム。銀座を中心とする画廊街で見られる「貸し画廊」では、若いアーティストたちが高いレンタル料を支払って展示を行うにもかかわらず、展示形式への規制や、画廊を訪れる人が家族や友人など限定的であることなどの問題があった。また、「コマーシャルギャラリー」では、一時のアートバブルなどによって、若いアーティストの作品もどんどん買われ、アーティストがギャラリーに所属して活動することができるようになった。しかしその反面、そこに漏れるようなアーティストが大勢いるのも事実。これらの問題を解決するように、これまでの形態とは異なるアートスペースが増えているのは、必然的なのかもしれない。

自分たちでスペースを作る

新たなアートスペースの特徴は、「自分たちにしか出来ないこと」をしながら、既存のアートという枠組みにとらわれない動きをしていること。そして、ディレクター/キュレーター、もしくはデザイナーやライターがスペースの運営に関わることにより、幅広い機能を持つ空間になっているということ。ほかにも、イベントやトークセッションなどの開催や、カフェやショップなどの併設など、作品展示のためだけではないスペースになってきている。

<オルタナティブ・スペース型>

これらのアートスペースのなかで、今最も勢いが感じられるのが「オルタナティブ・スペース」と呼ばれる多目的な空間だ。インスタレーションやパフォーマンスという表現形式に対応し、狭義の「美術」にとらわれることのないこのスペースは、1970年代初頭にアメリカを中心に増え、1980年代には日本国内にも登場した。国内のスペースの殆どはその後閉鎖してしまったものの、ここ数年でまた都内を中心に徐々に出現し始めている。

オルタナティブ・スペースの典型とも言えるのは、2008年にオープンした吉祥寺のArt Center Ongoingだろう。1階にカフェ&バー、2階にライブラリースブースとギャラリースペースを併設したこの複合施設は、アーティスト達の交流を通して「今アートに何が起きているのか」を模索するような空間だ。スペースレンタルは一切せず、かなりインディペンデントな動きをしている所が注目されている。

Art Center Ongoingは、吉祥寺の住宅街の一角にある。

原宿のVACANTは、木に囲まれた広い倉庫のような二階建ての空間が魅力。2階は展示から演劇の公演など、幅広い種類のイベントに対応したスペース、1階は世界中のZINEを販売する「ZINE’S MATE SHOP」や、ビーガン料理が楽しめる話題のカフェ「Vacanteen」を併設し、誰もが気軽に立ち寄れるラウンジスペースになっている。

2009年にオープンしたVACANTは原宿とは思えないほど広々としている。

<アーティスト・ラン型>

都内に限らず地方都市にも多いのが、アーティストが自ら運営するアーティスト・ラン型。このタイプのスペースは、1990年代の都市再生を背景に、英国・グラスゴーを中心に増え始めた。今月、千代田区の旧練成中学校にオープンした3331(サンサンサンイチ)Arts Chiyodaはその代表例で、アーティスト中村政人氏率いるコマンドNによって運営されている。閉校した中学校という広大なスペースに、ギャラリーやオフィスが入居するだけでなく、プロジェクト型のイベントが数多く開催され、今後は地域に開かれたアートスペースとなっていくようだ。

中学校の面影が残るスペースもまた魅力的な3331。

同じく、2007年に設立した茨城県水戸市の遊戯室はアーティストの中崎透氏、キュレーターの遠藤水城氏によって、今月オープンしたばかりの京都の0000(オーフォー)はアーティストの緑川雄太郎氏らによって運営されている。共にアート関係者だけではなく、様々な人が集まるオープンなスペースを目指して活動している。

今月京都にオープンした「0000」には沢山の人が駆けつけた。

<若手ギャラリスト型>

もちろん、若い作家を扱い、作品を「売る」ことに特化したギャラリーもある。2009年にオープンした早稲田のYUKA CONTEMPORARYは、ギャラリスト鶴野ゆか氏のもと、ペインティングからサウンドアート、ファッションや建築をバックグラウンドとする幅広いアーティストを扱い、マーケットにリリース。月一回の所属作家の企画展の他、映画上映などのイベントも開催している。

いくつかのギャラリーフェアにも参加しているYUKA CONTEMPORARY。

<レンタルスペース兼自主企画型>

最近特に多く見られるのは、これまでの貸し画廊というシステムが抱えた問題を解決するような、自由が利く展示が出来る比較的賃料も安いギャラリーだ。これらのギャラリーは単なる貸しスペースではなく、自ら展示を企画・開催するのも特徴の一つ。2000年にオープンした麹町画廊は、壁に直接ペイントが可能という高い自由度が特徴。1クール6日間で73,500円とレンタル料も良心的で、ストリートアートを中心にオールジャンルを取り扱っている。

ストリートアートを中心に扱う麹町画廊の様子。

野外フェス「Sense of Wonder」を主催するOBNが運営するスペースPLSMIS(プラマイ)は、2009年青山にオープン。白壁ではなく、黒板色をした壁に囲まれ、バーカウンターに加え、中庭も併設され、従来のギャラリーにはない雰囲気が楽しめる。展示だけでなく、パーティスペースとしてもレンタルが可能。

PLSMISでは緑が楽しめるのも魅力的。

2008年に高円寺にオープンしたAMP cafeは、音響システムも完備しているため、アコースティックライブやDJイベントにも対応し、アート、音楽、ファッションと幅広いジャンルのイベントで盛り上がりを見せている。レンタル料は企画によって異なるが、破格であることは間違いない。

行く度に異なる展示が楽しめる高円寺AMP cafe。

<メディア・ショップ連動型>

メディアやショップによって運営され、その個性を生かした展示を行うのが、メディア・ショップ連動型のスペース。クリエイティブ系ウェブマガジンPublic-image.orgを運営するANSWRが昨年池尻にオープンしたスペースPUBLIC/ IMAGE.3Dは、10年代の新しい価値観やコニュニティをデザインすべく、展覧会やクリエイターを招いたトークショーを開催しているほか、デザイン・プロダクトも販売。また、本の魅力を伝える青山のスペースNOW IDeAは、個性的でハイセンスな書籍を販売する書店、ユトレヒトによって運営されている。

道に面した全面ガラス張りが印象的なPUBLIC/ IMAGE 3D。

新しいアートスペースが増えた理由

「自分たちで面白いスペースを作る」という動きは、もちろんアートの変容やアーティストからの需要から来るものだが、社会環境の変化もその一因のように思われる。まず挙げられるのは、メディアの変化。最近のTwitterやUstreamの盛り上がりで分かるように、インターネットの浸透は、自分が選択したソースから情報を得ることを可能にし、アートの新しいプラットホームともなった。もう一つ考えられるのは、アートスペースに関わる人々の世代。その多くが1970年代後半から1980年代前半生まれの、いわゆる「ロスト・ジェネレーション」と呼ばれる世代だ。バブル崩壊後、非正規雇用が広がったとも言われる時代に社会に出た彼らは、従来の働き方や生き方に違和感を感じ、新しい動きをし始めた世代とも言える。

こうした背景から、もはや、決められたひとつのものへの親しみは無くなりかけている。アートスペースでも、ディレクターやアーティスト、オーディエンスも、自分たちが「いま面白いアート」だと思うものや場所を発信し、また受信している。そこには、自分たちが面白いと思う方法で、ゼロから作り上げようとするDIY精神が見られる。そうすることで、それぞれの創造性が磨かれ、益々多様化が進んでいるのではないだろうか。

先程ご紹介した千代田区の3331では、地域社会に開かれたスペースとなることを意識しているが、今後、アートスペースが地域の人々も巻き込むような動きが出てくるのかもしれない。全国的に開催されるアートプロジェクトのような「地域の再生」という観点ではない地域とのつながりに期待し、これからも増え続けるアートスペースが幅広い人々の集う場所になっていくことを願いたい。

(Text:Ayana Watanabe)


SPECIAL ISSUE

季刊を基本とした moonlinx の特集

もっと見る

+ART

文化の背景と未来を読み取るロングインタビュー

もっと見る

NotSame.

クリエイターによる紹介制リレーインタビュー

もっと見る

VISUAL FEATURE

文化や社会をきりとるビジュアル記事

もっと見る

REVIEW & RECORD

クリエイター達による商品レコメンド

もっと見る

EDITOR'S NOTE

編集スタッフがつづる、編集/制作裏話、日常

もっと見る