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制約や偶然さえも作品の一部―河村康輔

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11/10, 2008

KEYWORD :
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グラフィックデザイナー・河村康輔はこれまで、エッセイストとしても名が知られている漫画家・根本敬の著書「龜ノ頭のスープ(改訂版)」のペインティングや、中原昌也「子猫が読む乱暴者日記(文庫版)」の装丁などを手がけてきた。昨年には、VANDALIZEとのコラボレーションによりTシャツを制作するなど、その精力的な活動は途切れることがない。またアーティストとしての顔も持ち、先日も故郷である広島にてグループ展が行われた。

彼の表現には、ある意味不思議な空気と強烈なインパクトがある。その秘密に迫るべく、インタビューを行った。


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―河村さんにとって、デザインのルーツはどこにあるのでしょうか?

河村 根本的なところでは、十代の頃に聞いていたハードコアの音楽にあると思います。ですが、それだけではありません。
「デザインの中に強いメッセージをこめる」というような濃いこともできなくはないけれど、それとは全く逆に、どれだけ崩してどれだけポップにできるかこそが勝負だと思っています。やはり、どんなデザインでも、どこかにポップさがないといけないと思っているのでなおさらですね。そしてそうやってできたモノがどう解釈されるかも、見てくれる人が好きに考えてくれればいい、というのが僕の考えです。


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―河村さんのデザインは、アヴァンギャルドな印象を与えるものが多いように感じていましたが、フォトエッセイ「チョートク海をゆく」(写真右上)の装丁のように、広い層をターゲットにしたデザインもこなしていらっしゃるんですね。随分とテイストが違いますが、こういったテイストの違いによるスイッチの切り替わりというのはあるのでしょうか?

河村 いえ、そういうわけではないです。自分の中ではどういうデザインも同次元に住みついているという感覚ですね。
デザインの仕事の場合、自分の主張やメッセージを100%好きに吐き出しても形になるアートとは違い、クライアントの意向があったりターゲットが特殊だったりと多かれ少なかれ制約が付いて回りますが、その中でどう表現するかというのが楽しいと思っています。制約も作品のうちだと思っているので、極端なたとえをすれば仮に自分のデザインの上に3割引のシールが貼られても、それを含めてデザインだと僕は思うんですよ(笑)。
「こういうデザインは手がけたくない」あるいは「これをやるにしても自分の名前は出さずにおきたい」というような、テイストに対する好き嫌いは全くないです。むしろ、今までやったことがないようなタイプのデザインなら、どうやってここから面白さを引き出そうかわくわくしますね。


―河村さんはアーティストとしても活動していらっしゃいますが、特に思い入れが強い作品はありますか?

河村 やはり一番のベースとしてやっている、シルクスクリーンを使った作品です。シルクスクリーンというと、普通は絹を用いて刷った「版画作品」のことを指すんですが、僕は逆に「版」自体を作品として発表しています。
今までのアートを考えると、多くの人が価値を感じるのは「本物が一点しかない」というところですよね。シルクスクリーンの場合は、刷られた作品数しか本物が存在しないはずです。でも僕の作品は「版」自体なので、この作品を買った人が本物をいくらでも刷ることができる、つまりコピーが可能になります。買った人はもしかしたら、それに着色をするかもしれないですし、または驚くほど大量に刷るかもしれない。そういう予想がつかないことも含めた上で、作品を人に「託す」という意識です。このように、作品が自分の手を離れて、買った人が好きなように使った時点で作品として完成する、という考えは、師匠である根本敬さんのスタンスを見ているうちにいつの間にか自分の中に染み付いたスタイルの一つなんですが、逆に言えば、人の手に渡ったときに自分の作品はどういう形になっていくんだろう、という期待をいつも持っています。また、表現だけに没頭しているつもりはなく、スタンスとして「シリアスな表現をどれだけ“ギャグ”でやれるか」、「見てくれる人をどれだけ騙せるか」ということを大事にしています。僕の作品はかなりシリアスに見えるのでしょうけど、実際にやっている方としては、そこまで真剣に考えていなかったりするんですね(笑)。


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―今後はどういった展開をしていきたいですか?

河村 シルクスクリーンの作品のように、いつも逆転の発想を武器にやってきましたが、やはりこれからもそのスタイルは続けていきたいです。デザインが飽和状態になってしまった00年代という時代に対して、僕なりのやり方で少しはパンチを与えることができたかなとも思っているので、今後も更に面白いことを探したいですね。
80年代から90年代にかけて流行ったアヴァンギャルドなテイストというのは、僕にとってもルーツの一つではあるんですけど、そこに固執していては次の時代に行けないと思ってやってきました。同じように、00年代的な、ポップなだけのデザインでは、この先生き残ってはいけないんではないかと思います。境目や固定観念を壊す側としていろいろと活動してきましたが、もうすぐ来る2010年代には、ジャンルレスというか、本来の意味での「ミクスチャー」こそがやって来ると思っています。なので僕としてはもっと自由に動き回れると思っていて、とても楽しみにしているんです。やはり9 から10、2009年から2010年に変わるときというのは大きく流れが変わると思うので、その波に乗れたらいいですね。


ふくやま美術館でのグループ展では、壁に展示していたはずだった根本氏の作品が床に落ちてしまったが、「これも作品のうち」とそのままにしておこうとしたら会場側に止められてしまった、ということがあったという。偶発的なアクシデントさえも作品の一部として歓迎する、彼の哲学の一貫性が伺えるエピソードであった。


来年1月にも、TRANSIT GENERAL OFFICE(東京・北青山)にて作品展が予定されているという。彼のこれからの活躍にも注目していきたい。

河村康輔
79年広島県生まれ。特殊デザイナー他プラス・ワン(仮)。04年、ZAIDE名義で活動開始。根本敬「龜ノ頭のスープ」改訂版のペインティング、中原昌也「子猫が読む乱暴者日記」文庫版の装丁、宇川直宏、他著「RANGOON RADIO」のデザイン等を手掛ける。
06年、根本敬氏個展『根本敬ほか/入選!ほがらかな毎日』入選。「SUMMER SONIC 2006」で行われた展覧会「Rock and Roll circuit」に参加。
07年、WORD UP主催の展覧会に参加。
08年、初個展「0年101」。
08年、ふくやま美術館(広島)にて行われた展覧会とイベントを企画。それに根本敬氏、中原昌也氏、キングジョー氏らと参加。09年2月頃、東京でも開催予定。
アパレル、書籍、雑誌、広告、DVD・CDジャケット、その他無差別(無意識)に様々な媒体で活動。


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