今年の6月から7月までロンドンのケミストリー・ギャラリーで開催されたダミアン・ポレインの個展「Totem 49」のメイン・ビジュアル。「Totem」は、トーテムポールの意。
今年の夏、グラフィック系としては評判の高いイースト・ロンドンのケミストリー・ギャラリーで個展を開催したダミアン・ポレイン(Damien Poulain)は、アパレルのクライアントを多く抱える、今、大注目のデザイナーだ。コンピュータで全ての作業を行うことが当たり前となったこの時代に、誰もが日々目にし、手にする「紙」を使い、手間をかけて作られた彼の作品には、最近のデザインにはあまり見られない「手作りの温もり」が感じられる。素敵な作品のいくつかを拝見しながら、ダミアンさんご本人にお話を伺った。
—まず、自己紹介をお願い致します。
ポレイン ダミアン・ポレインです。フランス出身のアート・ディレクターで、現在はロンドンを拠点に活動しています。2003年にロンドンに移る以前は、ドイツ、イタリア、スペインでも生活していました。現在は、フリーランスとして商業的な作品とプライベートな作品の両方を制作していますが、プライベートな作品が商業的な作品に影響を与え、またその逆も常に起こっていると言えますね。

雑誌「Rodeo」の為のビジュアル

同じく、雑誌「Rodeo」用のビジュアル
—これまで様々なプロジェクトに携わっていらっしゃいますが、特にお気に入りの作品を二つほどご紹介して頂けますか?
ポレイン 二つ選ぶとしたらユニクロとピエトロ・ヒューゴ(Pieter Hugo)のプロジェクトでしょうか。ユニクロはご存知、国際的なアパレル・ブランドで、ピエトロ・ヒューゴは南アフリカで活動するフォトグラファーで私の友人でもあります。
まず、ユニクロのプロジェクトでは、世界中のユニクロのショップで配布されたフリーペーパー「UNIQLO PAPER」に掲載するための、三枚一組のイメージを二組制作しました。元々は私のプライベート作品を通して依頼が来た仕事でしたから、自分のフィールドを探求できる良い機会でもありました。最初の依頼は、旗艦店のある3都市をテーマにしたイメージを制作することでした。これに対して、私は切り紙でその街を作るアイディアを思いつき、そうすることで全体をユーモアや色鮮やかな形で構成することができました。エネルギー溢れるこのブランドのダイナミズムをうまく反映出来たと思っています。

ユニクロのフリーペーパー「UNIQLO PAPER」

ロンドンをイメージして制作された作品
こちらは東京バージョン
ポレイン このプロジェクトの二度目の依頼では、言葉を使ったアプローチを試みました。ここでは、自分のタイポグラフィーの技術を活かして、詩的な文章をレイアウトし、それぞれの都市に結びつけていきました。その結果、作品はミニマルでありながらも、ビジュアル的に非常に印象的なものとなりました。

「川を越え、路地を抜ける」

「頂上への途中で空に手を触れる」
ポレイン ピエトロ・ヒューゴのプロジェクトでは、写真集のレイアウトとアート・ディレクションを担当しています。つい最近、4冊目を終えたばかりなのですが、彼は本当に素晴らしいフォトグラファーで、私は彼が表現するアフリカのイメージが大好きなのです。彼が今取りかかっているテーマは、今まで私達が持っていたアフリカのイメージとは異なり、変化の中にある"力強いアフリカ"です。私はこのプロジェクトで彼と密に仕事が出来ることを非常に嬉しく思っていますし、彼の作ったストーリーのエネルギーとその内容をとても気に入っています。このプロジェクトを進める上で私達は何度も壁にぶつかっていますが、いつも何らかの解決策に辿り着いて、最終的にはそれが彼の考え方やテーマに上手く当てはまっているんですよ。 彼は私に自由に制作させてくれているので、その結果、話し合いや意見を交換することで全体がうまく構成され、多くを学ぶこともできました。彼の最新作は9月に発売される予定です。
ピエトロ・ヒューゴの写真集「NOLLYWOOD」
同じく「NOLLYWOOD」より
—写真集のアート・ディレクションのような仕事もこなす一方で、ダミアンさんの作品の多くにはひとつのカラーがあるように感じます。ご自分の作品の特徴を説明するとしたら、どのように表現されますか?
ポレイン 手作りで、シンプルで、意味深で、遊び心があり、色鮮やか。そして、進化中であり、進行中でもあります。常に新しいものを制作して自分自身を驚かせ、自然の流れにまかせて発展させるようにしています。
—通常、デザインの仕事では非常に限られた時間しか与えられず、大部分をMacで制作するのが一般的だと思いますが、あなたの作品は手間や時間がかかっているものが多いにも関わらず、アパレルを中心に多くのクライアントに支持されていますよね。ご自分ではそのことをどのように思っていらっしゃいますか?
ポレイン おそらく皆さんは、作品の裏に隠れた「努力」を感じ取ってくれているのではないでしょうか。例えば、イラストレーターで描いたイメージをプリントアウトして、それを切り抜いて撮影したものを、もう一度コンピュータに取り込むなど、私はいつもデジタルとアナログの技術を組み合わせています。ですので、実際、コストも時間もかかっているのですが、他とは少し違う手作り感のあるものを作る為の努力は、とても意味あることだと思います。私に信頼を寄せてくれるクライアントには感謝の気持ちでいっぱいですよ。
NIKEのショップ・ウィンドウ用ポスター
—作品からはアイディアが次から次へと溢れ出て来ているという印象を受けますが、そのコツは何でしょうか?
ポレイン 何かを読んだり、見たり、散歩したり、人と会ったり、調査したり、どこかを訪れたり、どんなことでも私の好奇心を刺激してインスピレーションを与えてくれます。それから、メモを取り、データをまとめ、考え、それについて話し、人と意見を交換し、私の中でゆっくりと自然にアイディアが育ってゆくのです。

英ガーディアン紙の付録「誰もが読むべき1000冊サイエンスフィクション&ファンタジー編」用ビジュアル

同じく「戦争&旅行編」用ビジュアル。今年の1月の作品。
—では、最後に日本のクリエイターの皆さんに何かメッセージを頂けますか?
ポレイン 皆さんコンニチワ!まずは一緒に一杯飲みましょう(笑)。時代遅れに聞こえるかもしれませんが、日本を訪れることは昔からの夢です。私が子供の頃は、フランスの子供達は皆日本のマンガやアニメを見て育ちましたから、幼少期の思い出に実際に触れてみることがどのような感じなのか好奇心でいっぱいです。今は食べ物や散策のようなささやかなことに興味がありますが、後々は日本の人々やクライアントと一緒に仕事をしたり、展示を開催してみたいですね。
(Text:Chiemi Isozaki)
ダミアン・ポレイン/Damien Poulain
イースト・ロンドンを拠点に活動するフランス出身のグラフィック・デザイナー兼アート・ディレクター。書籍や雑誌、レコード・スリーブなどの印刷をベースとしたプロジェクトを得意とし、アート・ギャラリー、ファッション・ブランド、ミュージック・レーベルのポスターやコミュニケーション・イメージなども制作する。デジタルとアナログの技術をミックスさせたパーソナル・プロジェクトが「Grafik」「Dazed&Confused」「Creative Review」など、英国を代表するクリエイティブ/カルチャー誌の多くに取り上げられている。













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