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約三年半振りのソロアルバムをリリース、環ROYインタビュー

Music
03/11, 2010

KEYWORD :
BREAK BOY
DJ YUI
ECCY
fragment
NEWDEAL
OLIVE OIL
POPGROUP
七尾旅人
環ROY

2006年のデビュー以降、フジロックをはじめとする様々なフェスへの出演や、多様なアーティストとのコラボレーションなど、ジャンルを越境した活動で注目を集めてきたラッパー、環ROY(たまきロイ)。3月17日にPOPGROUP Recordingsからリリースされる約3年半振りの待望のソロアルバム「BREAK BOY」は、早くも話題の「Break Boy in the Dream feat.七尾旅人」をはじめ、色彩豊かなトラック群で、非常に聴き応えのあるアルバムとなっている。moonlinxの読者の方でも日本のヒップホップを聴いたことがない人は多いかもしれないが、インタビューを通じて見えてくる環ROYの表現に対する考えは、どの分野にでも共通する点が大きいはずだ。ニューアルバムの話をはじめ、一人の表現者として、ご本人にその想いを伺った。


―「BREAK BOY」はソロアルバムとしては3年半振りだそうですね。これまで、fragmentEccyDJ YUIOLIVE OILNEWDEALの5人のトラックメイカーとのコラボレーションで5枚のミニアルバムをリリースし続けていましたが、ソロアルバムはどういう位置づけになるのでしょうか?

環ROY コラボレートの場合、双方の感性をフュージョンさせて着地点を模索します。なので例えば、自分の好みや美意識から外れることがあっても、コラボレート相手の趣味趣向に合わせたりもします。これは自身の持つセンスからハミ出して、新しい価値観を掘り下げるって行為だと思うんですけど、今回のようなソロ作の場合、自分自身の好みや美意識を先鋭化し、それだけを濃密に表現するって感じです。あとは、コラボレートで得た様々な経験とか価値観をフィードバックし、なおかつそれをアップデートして提示できるように意識しました。

―では、タイトル「BREAK BOY」に込められた意味や、伝えたかったメッセージを教えてください。

ニューアルバム「BREAK BOY」ジャケット。

環ROY ヒップホップを好きな人とか、実際にヒップホップをプレイする人を、「BREAK BOY」とか「B-BOY」って言うんですけど、まんまその言葉をタイトルにしました。少し違うのは、ヒップホップの「不良がやる音楽」「黒人の音楽」みたいな既成概念上にある「BREAK BOY」ではなく、「僕なりのヒップホップ観、B-BOY像を示す」という意味でこのタイトルをつけています。アメリカのヒップホップをそのままトレースするのではなく、自身のリアリティに根ざしたヒップホップ観を提示したいと考えました。あとは現状をBREAKして先のシーンへ前進するってサブテーマ的な意味合いも込めました。

―今回のアルバムでは、幅広いアーティストをフィーチャーしていて、多様な音楽性を楽しめると同時に、リリックに込められたメッセージ性も強いように感じます。今作では、両者のバランスはどのように意識していますか?

環ROY これまでの僕の音源って、メッセージと言うよりは「音としてのラップ」って部分を前にだしてクリエイトしていたんですよ。例えば外人が聴いた時に「何人が作った音楽なんだろう?」って思う感覚をドメステイックに向けて喚起するみたいなベクトルだったんですね。そういったクリエイションのおかげもあって、他ジャンルの人からは「環ROYおもしろいじゃん!」みたいになってくれたんですが、ヒップホップのシーンにはあまり伝わっていないと感じました。で、それはヒップホップがメッセージの音楽だと思っている人が多いことに起因しているんだと思ったんですね。なので、今作は音を鋭角にクリエイトするという方向を踏襲しつつ、より踏み込んで「分かりやすく言葉にする」って事に挑戦したいと思いました。なので、より“メッセージ”な詞になってるんだと思います。

―この約3年間でトラックメーカーとのミニアルバムを5枚出しているのというのは、ものすごいスピードだと思うのですが、多くリリースすることを心がけているのでしょうか?

環ROY 週に1曲でも作れればこのくらいになるので、自分的にはそんなにスピーディだとは思ってないです。あと自身の多様性、柔軟性を提示したいと考えたし、PRIMAL SCREAMやJUNGLE BROTHERSのように、作品毎に違ったクリエイションを発表するアーティストが好きなので、こんな活動なっていて、且つ作品が多く見えるんだと思います。

―ライブの時はご自分でCDJ、ミキサーを操作していますよね。あのスタイルはどう思いついたのでしょうか?

環ROY 一番大きい理由は、単純に一人でやれば誰かと練習する必要もないので楽だから。あとヒップホップのライブって、前にMCがいて、後ろにDJがいて、みたいな構図が大半なんですけど、それも形骸化しているなーと思ってて。「オマエCDJのボタン押してるだけだろ?」みたいな。それに対するアンチテーゼにもなってるんですよ。まあ、それは完全に後付けで単純に一人が楽だからですね。

―環さんはこれまで、ヒップホップ以外のアーティストとコラボレーションをしたり、従来の日本のヒップホップシーンと呼ばれるような所を超えて注目されているような印象があります。ご自身でそういうスタンスは意識しているのでしょうか?

環ROY 僕自身が日本のヒップホップシーンの中で形成されてきたわけなので、日本のヒップホップシーンはなんていうか地元って感覚なんですね。で、その地元にいつまでも留まっているより、いろんな街を見に行ったほうが楽しいんじゃないかと思うようになってきたと。地元(日本のヒップホップシーン)から一線を画すように活動しているというよりは、他の地域の人と交流し、出会っていくためにも、外向きでいる事に意識的なだけなんだって思います。単純にその方が豊かって感じですね。

―そういう中で、どのようなことを常に意識して制作していらっしゃいますか?

環ROY 表現って、自分の本質を探るような行為だと思ってて。元々備わっている資質みたいなものを探求していくことっぽいんですよ。でもそれだけだとアウトサイダーアートみたいになっちゃうっていうか、あれが最強になっちゃうので、そういう事も意識しつつポピュラリティを意識していければよいなって思います。

―ある意味で「ポップさ」ということにも関わるのだと思いますが、今後どのような音楽を作っていきたいですか?

環ROY 例えば、それこそポップミュージックって一番作るのが難しい音楽だと思ってて、なんというか、作る事自体は難しくはないのかもしれないけど、「様」になった状態で発露することが物凄く難しい音楽だと思うんですよ。で「分かる人にだけわかればいい」っていうアーティな表現と、「全員に分かってもらいたい」っていう大衆的な表現のどっちかに偏ってしまったら、もうそれは「様」にならないのかなって思ってて。2年後にはワゴンセールで投売りされる消費物でしかなくなるんじゃないかと思ってるんですね。そういう事を考えてみると、どうせ音楽をやり続けるのなら、そのどちらにも偏らないで、いい塩梅を目指すというか、双方の価値観を上手に融合させるというか。そういった意味で自分なりにポピュラリティを意識して制作していければよいなと。そういうビジョンをより明確化して、長く音楽を続けていければよいなと思っています。

(Text:Ayana Watanabe)

環ROY/Roy Tamaki

ラッパー/MC。2006年、1stアルバム「少年モンスター」でソロデビュー。鎮座DOPENESSやOLIVE OIL、□□□、fragment、Eccy、NEWDEAL、DJYUIなどのアーティストとコラボレートし、5枚のミニアルバムと4枚のレコードを発表。Fuji Rock Festival '08、'09出演。ヒップホップはもとより、ロックやテクノをも消化しながら、全国各地の様々な音楽イベントに出演し注目を集めている。2010年3月17日、2ndアルバム「BREAK BOY」をPOPGROUP Recordingsよりリリース。


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