テーブルウェアコンテストや高岡クラフト展等で数々の賞を受賞した、青木良太さんの作品「Bijoux」。(Photo: Toyomi Nakamura)
現在、陶芸家として多忙な日々を送る青木良太の作品には、陶芸を知らない人をも魅了する不思議な美しさがある。「陶芸?そんなの興味ないよ」と言う人ほど、その美しさに引き込まれてしまうのだ。先月末よりTKG Daikanyamaで開催中の個展で、青木さんご本人にお話を伺いながら、彼がその美しい作品から一体何を伝えようとしているのかを探ってみた。
—陶芸家になって、もうどのくらいが経ちましたか?
青木 2002年に陶芸家になったので、もう7年ですね。
—もうそんなに経つんですね。出身は富山県だそうですが、今は岐阜県土岐市を拠点にしていらっしゃいますね。なぜそちらに?
青木 元々、岐阜県多治見市の陶磁器意匠研究所に陶芸を勉強しに行っていたんです。多治見と土岐は車で10分くらいの距離で、この辺りが美濃焼きで知られる地域なんですね。そこで制作しようかなと思っていたら、ちょうど土岐市に良い場所を見つけたので、今はそこにこもって活動をしています。
土岐市にある青木さんの工房。(Photo: Mari Sugino)
—青木さんは過去に色々な道を志して、最終的に陶芸に辿り着いたそうですね。
青木 大学時代、ものすごく遊んでいた時期にふと将来に不安を感じて、服作りやアクセサリー作りをはじめ色々なことに挑戦したんです。ところが、どれもちょっと違うなと感じて、カリスマ美容師ブームが起こった時に、モテそうだという不純な動機から美容院でバイトを始めました(笑)。でも、まだ時間に余裕があったので、今度はセンスを磨いてみようかと軽い気持ちで陶芸を始めてみたんです。ところが、作ってみたら「これしかない!!」という衝撃があったんですよ。それで、どうしても陶芸家になりたくて、陶芸家の略歴が載っている本を見たんです。でも、みんな美大や芸大卒で、諦めかけていたところに、バイトをしながらでも通えそうな多治見陶磁器意匠研究所を見つけたので、そこに通いました。
—では、具体的に陶芸の何に魅力を感じましたか?
青木 一番魅力を感じたのは、釉薬(ゆうやく=陶磁器などを製作する際、器の表面にかける薬品のこと)の研究ですね。たった1gの調合の差で、思いもつかないものが出てくるんです。窯の炊き方によっても色が変わりますし、焼き物でしか見られない美しい表情も沢山あるんですよ。陶芸のそんな部分にすごく惹かれて、どんどん夢中になっていきました。
—青木さんの作品はどれも素敵ですが、代表作は質感がとても滑らかな白いカップ&ソーサーでしょうか?
青木 そうですね。あの土が出来るまで、2年間ぐらい研究しました。普通、釉薬がかかっているとつるっとした仕上がりになるんですが、逆に釉薬を使わずに焼締めだけにすると汚れがつきやすくなるんです。それが嫌で、土の中に釉薬を入れてみたんです。すると、汚れも付かない、強度もあるものができたんですよ!
美しい曲線を描く、白いカップ&ソーサー。(Photo: Tadayuki Minamoto)
—形にも独特な無国籍感がありますが、普段からインスパイアされるものはありますか?
青木 多治見意匠研究所を出た後にスイスに半年間留学したんですが、現代建築が好きだった時期でもあったので、コルビジェからレンゾ・ピアノまでヨーロッパの現代建築を見て回ったんですよ。そういう影響も少しはあったと思いますが、自分らしさをすぐに発見できたのは過去に色々挑戦したお陰だと思います。ファッションでもアクセサリーでも、自分らしさを出さないと他とかぶっちゃうじゃないですか。
こちらはややグラフィカルな、銀箔と金箔がついた茶碗。(Photo: Tadayuki Minamoto)
—今回の個展のオブジェは、いつもの繊細なお茶碗や食器とは真逆で、とても力強い印象ですね。
青木 オブジェというのはギャラリー側からの提案だったのですが、作品のルーツになっているのは、2年前に奈良の国立博物館で開催されていた仏像の展覧会で見た密教法具なんです。それを僕なりの技術で現代版にしようと思いました。
今回が青木さんにとって初挑戦となるオブジェの展示より。(c) Shinpei Takashima
—毎回「これが作りたい」という明確なアイディアがすぐに湧くタイプですか?
青木 普段から本当に焼き物のことしか考えてないので(笑)、すぐに湧くというよりは、常に頭の中にアイディアがいっぱいあるんです。作りたいものをイメージしておいて、あとは形にするだけですね。
—青木さんの作品に魅了される人には、陶芸を全く知らない人も多いというお話を伺いました。それは裏を返せば、彼らにとって青木さんが陶芸に興味を持つきっかけにもなっていると思うのですが、ご自分ではどう感じていらっしゃいますか?
青木 自分でもそう思っているんですよ。一般的に陶芸は美術画廊のような会場で展示されますが、僕がモーニングのへうげもの展や現代美術ギャラリーなど色々な場所でも展示しているのは、そういう理由からです。皆、陶芸を見たことがないだけなんですよ。「これ陶芸なんだよ、面白いでしょ。」って、その面白さを伝えることが僕の役割だと思っています。
TKG Daikanyamaで開催中の青木さんの個展の様子。こちらの展示物も全て焼き物。(c) Shinpei Takashima
—青木さんの作品に不思議な魅力があるのは、一人でも多くの人に陶芸の素晴らしさを知って欲しいという純粋な気持ちがあるからなのかもしれませんね。では最後に、今後挑戦してみたいものを教えてください。
青木 今回を機に、しばらくは今の時代に合った茶碗や食器と並行して、オブジェも作っていきたいです。僕はずっと焼き物でやっていけたら幸せですね。
青木良太さん。大注目を集める彼は、現在、某ドキュメンタリー番組にも追われている。TKG Daikanyamaにて。(c) Shinpei Takashima
(Text:Chiemi Isozaki)
青木良太/Ryota Aoki
1978年、富山県生まれ。2002年、多治見市陶磁器意匠研究所卒業。現在は岐阜県土岐市にスタジオを持つ。テーブルウェアフェスティバル最優秀賞、東京都知事賞(2002)、高岡クラフト展グランプリ(2005)、台湾国際陶芸ビエンナーレ特別賞(2008)など多数受賞。雑誌「モーニング」の「へうげもの展」をはじめ、様々な企画展に参加し、個展も勢力的に行っている。
青木良太 展
会期:
2009年5月28日(木)〜6月20日(土)
会場:
TKG Daikanyama
住所:
東京都渋谷区猿楽町29-18 ヒルサイドテラスA棟1
ウェブサイト:
TKG Daikanyama http://www.tomiokoyamagallery.com/TKGD
TKG Daikanyamaブログ http://tkgd.exblog.jp













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