12月16日から19日までの4日間にわたり、SIGGRAPH ASIA 2009(シーグラフアジア2009)がパシフィコ横浜で開催され、500名以上の研究者やクリエイター、業界エキスパートが講演やプレゼンテーションを行った。 SIGGRAPH ASIAは、映画やコンピューターグラフィックスの国際的な学会および、同時開催される世界最大級のイベントであるSIGGRAPHのアジア版で、昨年のシンガポールに続き今年で2回目を迎える。本場アメリカで行われるSIGGRAPHには規模では及ばなかったが、世界各地からクリエイターや技術者が訪れ、クリエイティブのバックグランドとなる先端技術について、活発なコミュニケーションが行われた。論文発表、アートギャラリー、講演、企業ブースなど、多岐にわたるイベントが催されていた今年のSIGGRAPH ASIA。今回のレポートはその中でも、研究者や学生による最先端技術を展示しているEmerging Technology(エマージングテクノロジー)エリアを中心に、幾つかのブースをピックアップして紹介していこう。
Networked Dome Theater
Emerging Technologyの奥でひと際存在感を示していたドームが「Networked Dome Theater」だ。慶應義塾大学デジタルメディア・コンテンツ統合研究機構とプラネタリウムでお馴染みの五藤光学研究所の共同プロジェクトで、フルハイビジョンの4倍の解像度になる4Kの映像を魚眼レンズ付きプロジェクタでドームに360°投影し、その場所にいるかのような臨場感を再現していた。
ドームの直径は約9m。中には61席が設けられ、360°の映像が広がる。(c) Takafumi Takani
ドーム内では今年の夏に話題になった皆既日食の映像のほか、リアルタイムで大阪からの中継を行っていた。私たちが普段インターネットを接続している無線LAN(56Mbps)の200倍近くの回線幅となる10Gbpsでつなぎ、それが中継映像だとは思えないほどのスピードで目の前に広がっていた。写真ではその臨場感が伝えられないのが非常に残念だ。
Walky
Walkyは、いわゆる指人間のジェスチャーをロボットの操作に応用したインターフェース。iPhoneのアプリ上で二本指を滑らせるとロボットが動き、片方の指をはじくとロボットがキックをする。ゲームコントローラーでボタンを押すよりはるかに直感的で楽しい。
Walkyのコンセプトムービー
これは慶応義塾大学メディアデザイン研究科修士の杉浦裕太氏を中心としたプロジェクトで、プロトタイプはわずか2日で完成させたという。発想力もさることながら、それを完成させる技術力にも驚かされる。
Walkyの実演をしてもらったところ。小気味良い動きをしてくれる。
Kaidan
Kaidanは、立命館大学の田村研究室が展示した拡張現実のお化け屋敷だ。外からは何も見えないただの和室だが、ヘッドセットをかぶるとそこに幽霊が現れる。
Kaidanの様子。外からは何も見えないが、体験している人には幽霊が見える。(c) Takafumi Takani
一緒に渡される刀は柄の部分しかないが、ヘッドセットからは刃の部分も見え、そのバーチャルな刃で幽霊を切っていく。この研究では、照明のデータに基づき、あたかもそこに幽霊がいるかのようにライティングや影の付き方を再現している。また、オープンエアタイプのヘッドフォンを採用し、その場の音とヘッドフォンから流れる音を織り交ぜ、サウンド面でも幽霊の存在を感じさせるような演出も見事だ。
実演の様子
Gainer
右側の小さな基盤がGainerだ。(c) Takafumi Takani
Gainer(ゲイナー)は、IAMASの小林茂氏を中心としたフィジカルコンピューティングのためのツールキット。USBメモリほどの基盤に入力と出力のポートがついており、センサやLEDなどを組み合わせて、コンピューターと物理世界のインタラクションを簡単にプロトタイプすることができる。株式会社カヤックが運営するFlashコンテンツを作成できるオンラインサービス「wonderful」では、Gainerを使ったフィジカルコンピューティングを学習したり、作った作品を発表したりできるウェブサービスを展開している。
注目を集めたロボット展示ブース
ロボットの展示ブース。様々なロボットが展示されている。(c) Takafumi Takani
Emerging Technologyのほか、日本開催ならではの初の試みとして注目を集めていたのが、ロボットの展示だ。エンターテイメントから介護ロボ、そしてロボットがどこまで人間に近づくことができるかなど、その技術に関して一日の長ある日本が誇る、ロボット最新型が垣間見られるエリアとなっていた。
美少女ロボットのHRP-4C 未夢(ミーム)。満充電で20分動くという。(c) Takafumi Takani
中でも今もっとも注目されているのが、「HRP-4C 未夢(ミーム)」と言われる女の子の形をしたロボットだ。独立行政法人 産業技術総合研究所が開発したもので、身長158cm、体重43kg(バッテリ込み)と外見だけでなく体型も普通の女の子のようだ。服を着て人の中に混じっていたら、ロボットとは気づかないかもしれない。
さて、テクノロジーとアートが融合したイベントと言えば、moonlinxで昨年も取材した「文化庁メディア芸術祭」」を楽しみにしている方も多いかもしれない(こちらは年明けの2月3日に開催!)。今回のSIGGRAPH ASIA2009でレポートした展示は、今後のメディア芸術祭出展作品にも応用されるであろうテクノロジーが多数展示されていたように思う。来年のSIGGRAPH ASIAはソウルでの開催が予定されているので、その動向にも注目しつつ、ぜひ興味あるクリエイターには足を運んでほしい。
(Text:Takafumi Takani)
シーグラフアジア/SIGGRAPH ASIA
コンピュータグラフィックスとインタラクティブ技術を中心とした展示会とカンファレス。本場アメリカでの開催に続き、2008年のシンガポールを皮切りにて、アジアにおいても積極的に展開。日本初の試みとなった今年は、12月16日(水)から12月19日(土)の4日間にわたりパシフィコ横浜で開催された。次回の2010年は、韓国ソウル市での開催が決定している。













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