(Photo: KO-SASAKI)
SIGGRAPHをはじめ、様々な学会やロボットコンテストで活躍する若干23歳のロボットクリエイター、杉浦裕太氏。彼は若い発想と高い技術力で人間とロボットの豊かで楽しい未来を見せてくれる。SIGGRAPH ASIA2009で展示したiPhoneで新たなロボットの遊びを提案するwalky等、先端メディアを身近に感じさせる作品が多い。若き天才は何を想い、どこへ向かうのか。杉浦氏の今とこれからを訊く。
—この春で修士課程を終え、博士課程に進学されるそうですね。まずはご卒業おめでとうございます。ロボットクリエイターという肩書きですが、どういった研究や活動を行っているのですか?
杉浦 現在は慶應義塾大学メディアデザイン研究科(KMD)修士と戦略的創造研究推進事業ERATOの研究補助員として在籍しています。主な研究テーマは家庭用ロボットと人間のインターフェースです。基本的には学会発表がメインですが、SIGGRAPHなどのような展覧会でデモンストレーションを行ったりもしています。
SIGGRAPH ASIA 2009でデモンストレーションを行った「walky」。iPhoneの上で二本指を足のように動かしてロボットを操作するインターフェース。
—ロボットのインターフェースというのはどういった研究分野なのでしょうか?
杉浦 例えばパソコンであればマウスとキーボードというインターフェースで操作して、ゲームであればゲームコントローラーで操作しますよね。家電でもスイッチやリモコンなどのインターフェースがあります。何か新しいものが家庭に入る時、必ずインターフェースというものが必要になってきます。でもロボットをどのように操作するかというと、コマンドを打ち込んだりゲームコントローラーで動かしたりしかないんです。ゲームコントローラーでロボットを動かすというのは、ゲームの中のキャラクターの動作を現実世界にそのまま持ってきたようなものですね。でもゲームコントローラーだと、どうしてもゲームの延長線上でしかロボットを捉えられない。自分で判断して自分で動くドラえもんやアトムのような自律型ロボットの研究もされていますが、人間と一緒に生活できるような自律型ロボットが登場するには、まだまだ時間がかかります。そこで僕は、家庭というシーンの中でいかにロボットと人がうまく共存できるかを研究しています。
ロボットに料理をさせるCooky。GUIで指示を出すと、その通りにロボットが料理をしてくれる。
—ロボットに興味を持ったきっかけは何だったのでしょうか?
杉浦 もともと工作が好きだったのと、父の影響が大きいですね。父がタービンなどの機械設計技師で、小学生の頃から木を削って自作のラジコン飛行機を作ったりしていました。高校に入ってからはバイオリンとフェンシングも始めて、一時期工作から遠ざかっていたんですね。でも高校2年生の時、フェンシングの全国大会で北京オリンピックでメダルを取った太田雄貴さんと対戦をして、「この世界では勝てない」と感じました。ちょうど同じ時期に、ロボットを作るワークショップがあり、参加してみたらすごく楽しかったんです。ロボットについて色々調べたり、試行錯誤しながら作っていくうちに、本格的に勉強をしたいと思い、電気通信大学に受験を決めました。それからずっとロボット三昧の日々ですね。

杉浦一家。5人兄弟+1匹+数台の大家族!(Photo: KO-SASAKI)
—杉浦さんのロボットにはコミカルな動きが多いように見受けられます。単純な合理性だけでなく、愛らしさのようなものを感じますが、何かこだわっている部分などはあるのでしょうか?
杉浦 まずは何をもってロボットと捉えるかを考える必要があるのですが、工学的には何かしらの入力があって、それを処理をして、物理的な仕事をするものがロボットといえます。そういう意味では、洗濯機や炊飯器などもロボットなのかもしれません。私の中ではそれに加え自由に空間を移動すること、妖精や小人のような可愛らしさが必要だと考えます。それがないとロボットじゃなくて家電になっちゃうんですよね。例えば、洗濯物を折り畳むロボット「Foldy」は、畳み終わった後、最後にポンポンと服を軽く叩きます。作業としては冗長なのですが、その動作が1つ加わるだけで愛らしさを感じるようになります。まだ外観はメカですが、そういったことが家庭の中に入っていくという点で重要な要素だと考えています。
洗濯物をたたむロボット「Foldy」。ロボットの健気な姿に見ていると応援したくなる。

KMDの友人と。KMDには国際的かつ学際的なコラボレーションが生まれる環境だという。
—SIGGRAPH ASIA 2009で展示されていた「Walky」は、発案からプロトタイプ制作までわずか2時間と伺いました。どうしたらそこまで早くアイデアをかたちに出来るでしょうか?
杉浦 ちょっとしたネタやアイデアみたいなものは、いつもどこからともなく降ってきます。特に寝ている時が多いのですが、そういったアイデアを忘れないように、いつも携帯電話からPCにメールでメモをします。ある程度構想が出来てきたら、1人でも制作可能であればとりあえず1人で、他の人の力が必要であれば大学院で人を見つけてとりあえず作ってみます。一応研究としての位置づけや関連研究の調査などもしますが、まずは欲しいと思ったものをざっと作ってみることを心がけていますね。コラボレーションという意味では、今私が所属しているKMDの人たちが皆能力があってモチベーションも高いので、アイデアに賛同してくれればすぐに一緒に作ることができるので非常に楽しいです。情報共有にはDropboxを利用して、出来たものを常にみんなで共有することで、ほとんどミーティングの時間は持たずに作ることを優先しています。
—杉浦さんにとってロボットとはどんな存在なのでしょうか?
杉浦 あまりにも日常的になっているので、同居人に近いのですが(笑)、しいて言えば表現手段ですね。画家が絵を描いたり、ミュージシャンが演奏したり、作家が文章を書いたりするのと同じように、私はロボットを使って自分の考えを呈示したり、人をワクワクさせたいと考えています。それがたまたまロボットだったということですね。
—まだ23歳とお若いですが、10年後の夢についてお聞かせください。
杉浦 今後もずっと刺激し合える仲間と一緒に研究活動をやり続けたいですね。10年後もインパクトのある面白いことをやりたいです。それと、ロボットのインターフェースを開発するとともにその重要性を世の中に伝えていきたいです。10年後には、普通の家庭にロボットが当たり前にいる社会にしたいですね。
杉浦裕太氏。
杉浦裕太/Yuta Sugiura
1986年生まれ。2008年4月に慶應義塾大学大学院メディアデザイン研究科修士過程へ飛び入学。2010年3月同大学修了予定。ロボットと人をつなぐユーザインタフェースの研究を行っている。従来の声やジョイスティックを使った操作方法とは違った、操作に慣れない人でもロボットに柔軟に指示を与えることができるシステムを研究している。
杉浦裕太 ウェブサイト
http://sugiur.com/
慶應義塾大学大学院メディアデザイン研究科
http://www.kmd.keio.ac.jp/jp/index.html
戦略的創造研究推進事業 ERATO
http://www.jst.go.jp/erato/index-j.html













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