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都築響一インタビュー「編集会議は今すぐやめたほうがいい。」

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03/18, 2010

KEYWORD :
天国は水割りの味がする
東京スナック魅酒乱
都築響一

東京のリアルな住空間を撮影した「TOKYO STYLE」、秘宝館のようにあまり表に出ない全国の名所をまとめた「ROADSIDE JAPAN 珍日本紀行」など、常に独自の視点で日本と世界を切り取る都築響一。発売されたばかりの著書「天国は水割りの味がする 東京スナック魅酒乱(みしゅらん)」の取材エピソードから、彼の興味の対象や仕事への姿勢、若いデザイナーへのアドバイスまでをお聞きした。

(文:Michi Tamura)


東京のスナックを自らの足で取材し編纂した書籍「天国は水割りの味がする 東京スナック魅酒乱(みしゅらん)

—880ページ!本の厚さが5センチもあってすごいボリュームですね。

都築 2008年12月から1年間続けた、あるウェブマガジンの連載をまとめました。ウェブではさらにママやマスターの1曲というコーナーもありました。もちろん、それは入れられませんでしたけど。

—なぜスナックを取り上げられたのでしょう?

都築 もともと僕は地方出張が多いんですが、地方に行くとお店の選択肢がない。でも、実際にスナックに行ってみると、なんでこんなに面白いのに誰も取材しないのかと思うんです。スナックは日本で一番多い飲み屋。居酒屋はごはんを食べに行ったりするから、純粋に飲み屋というかバーとしては、スナックが日本で一番多いわけです。でもガイドブックは1冊もないという異常事態(笑)。これだけポピュラーで身近なのに、これだけ無視されている(笑)。

—確かにスナックガイドって見たことありませんね。

都築 僕たちは東京に住んでいるから、ワインバーとかなんとか、選択肢がいろいろありますよね。でも、日本の9割の場所には選択肢がない。飲むといったらスナック。ご飯を食べた後にもう1軒行くならスナックしかない。でもメディアには全然載らない。紹介されるのは、1割くらいの人が行く1割くらいのお店に集中している。9割の人が暮らしている状態を全く無視しているわけじゃないですか。それって不思議なことですよね。

—お店はどうやってセレクトされたのですか?

都築 人に教えられて行った店もありますけど、6~7割は飛び込み。会員制で断られたところ以外はほとんど取材しています。普通、お店取材って当たり外れがあるじゃないですか。でもスナックの場合はほぼ10割が「あたり」です。お店は担当編集者と一緒に探したのですが、最初は僕たちに嗅覚があって、僕たちのチョイスがいいと思ったんです。でもそうじゃなくて、スナックは全部面白かったんです(笑)。

—取材方法は?

都築 例えばレストランなら、まず電話してアポを取って取材して、それで終わり。でもスナックはそういうことじゃ許されない。彼らは別にお店をプロモーションして欲しいわけじゃない。地元の常連が来てくれればいいんです。僕が勝手に話を聞きたがっていて、彼らが優しいから取材に応じてくれるんですよ。まず、3回は黙ってお客として行くわけです。そして4回目か5回目で「ママさん、実は……」と切り出す(笑)。結局、5回はお店に行くわけです。これを毎週やるのは大変なこと。週に最低4日間くらい、1日最低2軒はハシゴしていました(笑)。

都築氏(c) Shinpei Takashima

—人はスナックのどこに惹かれるのでしょう?

都築 スナックの勝負は何かというと、ママやマスターのキャラクターです。もっと安く飲みたければ「笑笑」に行けばいい。大声で歌いたきゃボックスに行けばいい。長く続いている店はママさんがいい人だったり、面白い人なんです。当然変な客は排除されていくので、長く営業しているスナックは安心できます。多分、日本人の9割はそれを知っていて、東京に住んでいる僕らだけが知らない。実は僕らは情報弱者なんですよ。限られたものだけに詳しくて、それがメジャーだと思ってるけど全然違う。

—都築さんは前例のないお仕事が多いですが、今回もそうですね。

都築 レストランの取材だと、すでに「ぐるなび」などに載っているからお店のことが調べられるわけでしょう。それは後追いでしかない。そりゃスナックだって電話番号は調べられます。だけど情報がない。僕は取材をする人間なので、情報が無いところからスタートしたいんです。いろんな人のブログに載った時点でもうダメ。そういう意味でも、前例のない仕事だったので面白かったですね。

—「後追いはしない」のは昔からですか?

都築 僕は「POPEYE」に5年間、「BRUTUS」に5年間携わりましたが、編集会議って1回もありませんでした。僕はずっとフリーなので、提案しないと仕事がないわけ。自分で調べて面白そうな企画があったら、編集長やデスクのところへ行ってみんな直談判していました。会議でプレゼンをするということは、既にやったものがあるということで、やった人がいるということ。それは広告制作の作り方で報道じゃない。面白そうだと思ってやってみるので、まだ起こってないものはプレゼンしようがないわけです。プレゼンできるというのは後追いでしかない。プレゼンする理由は「もしウケなくても、みんなその企画でいいって言ったでしょ?」というリスク分散でしかないわけです。それにこの特集をやると決めても、自分の企画じゃないものをやったりしたら、その時点で本人のモチベーションゼロですよ。会議がすべてダメなわけじゃないけど、ものづくりには絶対向いていない。エネルギーやアイデアをつぶしています。他の職業は分からないけど、編集会議は今すぐやめたほうがいい。

膨大な書籍が並ぶ、都築氏の仕事場(c) Shinpei Takashima

—都築さんは多産です。なぜアイデアが次々に生まれてくるのですか?

都築 気になることはたくさんあるじゃないですか! 僕の場合は他の人がやっていないことを探しているわけじゃないんです。スナックに行ったらスナックが面白い。もっとこういうお店がないかと思って書店に行ったらガイド本がない。ないなら自分で作るという感じ。田舎に行って秘宝館に行ったら来月閉めると言われ、誰もこの秘宝館のことを記録してない。もったいないから自分で記録しておきたい。僕のモチベーションは、隙間を探してウケるものを作るんじゃなく、「焦燥感」とか「怒り」とか、そういうことですよ。これだけ飲食の雑誌があって、なぜみんなが行くスナックが取り上げられないのか。自分たちは汚いワンルームに住んでいるのに、なぜ雑誌は住めないマンションばかり特集するのかというのと一緒です。作り手たちの怠慢によって、僕の仕事は成り立っているんです。

—現在、都築さんの心を揺さぶるものは何でしょうか?

都築 黙って評価を求めずにやっている人。そういう姿勢を見れば、自分もやる気になるわけでしょう。 今「就活やだな」なんて迷っている若いやつに、そういう人たちを見せてあげたい。「就職なんかするな! リクルートスーツなんて買うな!」ってね。ところで、moonlinxは若いクリエイター向けの媒体でしょ?若いデザイナーの未来は明るいですよ。

—なぜそう思われますか?

都築 今の若いデザイナーは、紙とデータの両方で育っているから、ものすごくアドバンテージがある。これから電子書籍とかの時代になってきたら、40代以上のデザイナーには絶対できない。そういう風に育ってきていませんから。これからは、20代前半のデザイナーにとって、めちゃくちゃいい時代だと思います。

—最後に、若いデザイナーやクリエイターに一言お願いします。

今のほうが昔よりできることは100倍多いので、悩んでいるならやったほうがいい。自分で何か始めるか、黙って会社からお金をもらって働くか、ふたつにひとつ。シンプルですよ。

都築響一/Kyoichi Tsuzuki

1956年東京生まれ。現代美術、デザイン、旅などの分野で著作多数。廣済堂あかつき株式会社より、「天国は水割りの味がする 東京スナック魅酒乱(みしゅらん)」が発売されたばかり。4月に「夜露死苦現代詩」文庫版、7月には「珍世界紀行 アメリカ編」も刊行予定。5月には広島市現代美術館にて個展を予定。そのほかインターネットラジオ放送「DOMMUNE」第1回放送に続き、今後も参加予定とのこと。

http://roadsidediaries.blogspot.com/


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