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ドイツの巨匠 ディーター・ラムスに学ぶ、真のデザイン Vol.1

Product
06/04, 2009

KEYWORD :
ディーター・ラムス
ブラウン
工業デザイン
機能主義

dieter_rams08.jpg「ミスター・ブラウン」とも呼ばれたディーター・ラムス氏。© Vitsoe

ひげ剃りでお馴染みのドイツのブラウン社が、1950年代以降の家電業界において、機能と美しさの両方を兼ね備えた製品の数々で一大革命を起こしたことをご存知だろうか。そしてそのブラウン社で1955年以来、500を超える製品のデザイン・監修をしてきたのが、今年77歳になるディーター・ラムスだ。現在、府中市美術館で開催中の「純粋なる形象 ディーター・ラムスの時代 ー機能主義デザイン再考」では、ブラウン社製品やスケッチを含む300点以上の資料とともに、数多くのデザイナー達に多大な影響を与えたと言われるラムスのデザイン哲学を垣間見ることができる。moonlinxでは、本展のために来日したラムス氏本人と、彼がブラウン社の製品と並行して手がけてきた家具のシリーズを販売するヴィツゥ社(Vitsoe)の代表、マーク・アダムス氏に、良いデザインやデザインの未来などについてお話を伺った。


—まずは、ヴィツゥについて教えてください。

アダムス ヴィツゥは家具を売る単なるメーカーではなく、「ひとつの考え方」とでも言いましょうか。1957年に25歳のディーター・ラムスと出会った創業者のニールズ・ヴィツゥは、ディーターと共に「出来る限り長く使える家具」を作りたいと考えました。それが50年もの時が経った今でも生産され続けている私達の製品です。最近、「そういう商売をエコビジネスと呼ぶんですよ」と言われることがあります。しかし、二人が挑戦しようとしていたことは、当時は全く特別なことではありませんでした。

dieter_rams02.jpgディーター・ラムス氏がデザインしたヴィツゥ社のシェルフシステム。部屋の大きさに合わせて、好みの形に変えることができる。606 Universal Shelving System © Vitsœ (Photo: Ken Kirkwood)

dieter_rams11.jpg1962年に発表されたヴィツゥ社の椅子。デザインはもちろんディーター・ラムス。620 Chair Programme © Vitsœ (Photo: Steve Rees)

—アダムスさんは、どのような経緯でヴィツゥに関わることになったのでしょうか?

アダムス 私は元々大学で生物学を専攻していたのですが、20代の頃にあるインテリアショップでヴィツゥのシェルフシステムと出会い、そこで働き始めたことがきっかけで、ニールズとディーターの二人に知り合うことが出来ました。そして、二人の話を聞くにつれ、夢中になっていた生物学との間に多くの共通点を見出していったのです。

—生物学とデザインの間に、ですか?

ラムス 例えば、このブラウンの計算機は、日本庭園に似ていると思いませんか?ただ、これらのボタンには機能があります。

アダムス 赤は「とまれ」、緑は「すすめ」。黄色は警告しているんです。いつもあなたが必要なのは「=」のボタンだと。そして、蜂を見てみてください。例えあなたの視力が悪くても蜂が近づいてくれば、その色で気づくでしょう。なぜなら、自然界において黒に対して最も目立つ色は白ではなく黄色で、蜂はその色の組み合わせをしているからです。

dieter_rams03.jpgディーター・ラムスとディートリッヒ・ルブスのデザインによるブラウン社の計算機。ET66卓上計算機1987年ブラウン社(Photo:Braun GmbH)

ラムス つまり、この計算機は自然の法則に従っているということなんです。「色」とは動物や虫達に何かの合図を送るために、自然界でデザインされたものなんですよ。

—では、ヴィツゥの代表的な製品であるシェルフシステムについても少し説明して頂けますか?

ラムス ヴィツゥはひとつの家具ではなく、「システム」を作ろうというアイディアから始まりました。これは1955年、23歳の私が建築士としてブラウンに雇われたばかりの時に描いたブラウン本社のヘルス・センターのためのインテリアの構想図です。左にあるのがブラウンの新しいラジオで、部屋の奥にあるのが後にヴィツゥの製品となるシェルフシステムの初期のアイディアです。この時は、物をできるだけ背後に押しやろうとしました。

dieter_rams07.jpg1955年にラムス氏が描いたスケッチ。

—今ではこのような収納も珍しくはありませんが、当時は革新的なアイディアだったのではないでしょうか?なぜこのようにデザインにされたのですか?

ラムス 昔こんなことがありました。50年代にドイツのデュッセルドルフで開催されたオーディオ見本市でブラウンが一連の製品を発表して大変な話題になった時、ブラウン創業家2代目のエルヴィン・ブラウンはプレス発表で「ラジオはインテリアと調和しなければならない。私達の製品は家具と同じである。つまり、英国の執事のようでなければならない。」と発言しました。英国の執事とは、必要ない時は奥にいて、必要な時は近くにいるものです。それが、私達があらゆる製品を作る時に常に念頭においておかなければならないことなのです。

アダムス このシェルフシステムは、居住空間において押し付けがましくない存在で、製品にどうあるべきか命令を下すのは所有者自身です。私達の顧客の層は、昔からのお客様から若い方達まで本当に幅広いのですが、それは製品のシンプルさとニュートラルさにあると思います。しかし、今の世の中では、シンプルなものは流行に逆らっている感がありますよね。

ラムス 流行を無視するのです。流行は、やって来てはすぐに消えてゆく。地球の資源は残り少ないのですから、次の世代のためにも、長く使えるものを作らなければならないのです。

dieter_rams09.jpgヴィツゥ社のカタログより。半世紀も前にデザインされたシェルフシステムは、今の暮らしにも違和感なく調和する。© Vitsoe (Photo:Ken Kirkwood)

Vol.2に続く>

(Text:Chiemi Isozaki)


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