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FILE.014 (09/19, 2008) ハイブリッドの最新型

“ハイブリッド”をコンセプトに、今の東京ならではの新しい音楽+映像体験を発信してきたレーベル、W+K 東京LAB。その5周年を記念した作品「TOKYO.点」は、高木正勝の初収録作も含む20本のミュージックヴィデオを収録したDVD、これまでのアートワークのヴィジュアルリミックスと国内外のアーティスト42名による新作をコンパイルしたアートブック、そして制作過程を追ったブログという形でリリースされた。さらに、7月末に行われたリリースパーティでも、期待を裏切らない驚くべき仕掛けが。VJに“モーションキャプチャー”という最新技術を取り入れ、アーティストのライブ映像とキャラクターの3D映像をリアルタイムにシンクロさせたのだという。多彩なアイディアと最新のテクノロジーで独自の進化を遂げた“ハイブリッドの最新型”とは何か。レーベルのA&Rである池田ブルース大介氏、松尾アンソニー氏、イベント演出を担当した五十嵐一郎氏 (Stormworks.inc)、そして技術面でサポートしたクレッセントの小谷創氏、高橋真幸氏に話を伺った。

Text:Nahoko Emi Photo:Shinpei Takashima

アーティスト同士のインスピレーション
─「TOKYO.点」は“BOOK+DVD+BLOG”という形でのリリースとなりましたが、それはなぜですか?
池田 今までにやってきたものを単純にコンピレーションとして出すということではなくて、何か新しい面白いことをやろうという話をしていたんです。まず、これまでコラボレーションしてきたヴィジュアルアーティストが40名くらいいるのですが、彼らに見開き1ページのスペースを渡して、彼らなりの “Tokyo.点”を自由に表現した作品を作ってもらうという企画をしました。その途中段階のプロセスをブログでアップして、全アーティストに公開しました。日本人が13人、あとは海外からの参加だったのですが、お互いにいい刺激を受けながらやっているようでしたね。また、全てのプロセスを一般のオーディエンスにもリアルタイムで公開し、ブログでの体験とブックの作品、そしてDVDの世界観という3つの構成で表現しようと思ったんです。
─ハイブリッドというコンセプトに加え、“東京”のシーンを発信してきたこともレーベルの大きな魅力ですが、5周年となる本作を機に振り返ってみると何かシーンに変化はありましたか?
池田 東京という街の魅力は、やはり5年前と比べても進化していると思います。ほかの街では見られないアイディアや、それをすごいスピードで実現するということがあちこちで起きていますよね。W+K Tokyo Labもその一つとしてミュージシャンやヴィジュアルアーティストがその魅力を発信できる環境を5年間提供してきたわけですが、今回はその集大成となりました。
─レーベルアーティストはどのような基準でピックアップしてきたんでしょうか?
池田 音楽性だけでなく、オリジナリティや国際的なアピール度など色々な基準がありますが、やはり一番は「ハイブリッドな感性」がどれだけあるかということ。高木正勝だったら、映像と音楽、現代美術とエレクトロニックミュージック、いろいろな軸を混ぜて強い表現をしていますよね。HIFANAやDJ UPPERCUTもそうですが、それぞれのアーティストならではのハイブリットなセンスをどれだけ提供してくれるか。それを基に、どういうコラボレーションができるかという点を見ています。今年はJEMAPURという若手トラックメイカーや鎮座DOPENESSというMCの作品をリリースします。これまでボーカルものはリリースしていないので、初めて言語が入ってくるアーティストとして楽しみです。女性ボーカリストなどもいつかやってみたいですね。
─本作に収録されているJEMAPUR「MALEDICT CAR」は、関根光才さんの映像が使われていますね。東京のネオンや夜景が万華鏡のように動き回る素晴らしい作品だと思いました。この組み合わせは?
池田 関根光才の起用は、クリエイティブディレクターのエリック(クルーズ)によるものですが、僕も光才というディレクターの存在については以前から知っていました。レーベルとして、今まではハイレベルなアニメーションをコッテリとやってきたので、今回は実写で作りたいという話になって。光才は本当にフレッシュでいいなと思っていたのですが、期待以上のすごい作品を作ってくれました。実はかなり低予算で作っているのですが、カメラもとても進化しているし、いい映像が撮れていると思います。
ライブ映像と3Dのリアルタイムミックス!
─ライブの実写とアニメーションを組み合わせた映像が話題になったHIFANA「CONNECT」も収録されていますが、7月24日に恵比寿リキッドルームで行われたリリースパーティでは、この曲のVJでモーションキャプチャーを使用した演出がされ、会場を沸かせていたようですね。このモーションキャプチャーというのは?
五十嵐 ローンチパーティでも取り入れたのですが、そのときはDJ UPPERCUTのビジュアルがゲームのキャラクターに近かったので、「彼がロボットになったら面白いな」と思っていて。当時『鬼武者』というゲームにはまっていて、人間の動きをとらえて映像化するモーションキャプチャーという技術をメイキングか何かで見ていたんですね。そんなものをライブでできたらどれだけ面白いかなと思って。それでこの技術を調べて行き着いたのがクレッセントさんでした。
池田 そのときは、DJ UPPERCUTの動きを、ロボットのキャラクターの映像にリアルタイムでシンクロさせて、「DJ UPPERCUTがレコードを探す動きに合わせて、スクリーンに映し出されたキャラクターも探す」というような試みでした。テクノロジーが今と全然違うので、ある意味チャレンジでしたね。そこから5年たって、今回はHIFANAの「CONNECT」の最新キャラクターでもっとすごいことをしようということになりました。5年前に行われたレーベルのローンチパーティ以来、W+K Tokyo Labとしてのライブはできなかったので、集大成としてすごいイベントをやりたいと。昔のクルーや新しいビジュアルチームが集まって、新しい音楽/映像体験を目指しました。音楽と映像と新しいアイディアで、東京ならではの体験を作るというミッションは、ミュージックヴィデオや、パッケージだけでなく、ライブでも同様に実現したいと思っていたんです。「CONNECT」ではキャラクターの3D映像をHIFANAのライブ映像とミックスして、KEIZOとジューシーの頭の部分だけがキャラクターになって動いたりしました。モーションキャプチャーのほかに、ブース前にはLEDを使ったパネルの演出もしていて、どちらもVJがリアルタイムにミックスしているんです。
─モーションキャプチャーをライブで使うという前例はあったのですか?
小谷 5年前を考えてみると、リスクはありましたよね(笑)。やれないことはないと思ってやってみましたけど。当時としては世界初の試みだったのではないでしょうか。
五十嵐 当時は、精密機械なんだからとちょっと怒られたんですね(笑)。コストもかかるし、クラブみたいな場所でちゃんと動くかという。振動があるじゃないですか。それが一番恐いとおっしゃっていて。
─5年前と今回は、技術的にどのような点が違うんですか?
松尾 まず、アーティストが付けるセンサーの数が全然違います。5年前はボディスーツのようなものでしたが、今回はひじと帽子にセンサーが付いていて、遠くから見たら分からないくらいでしたね。
高橋 前回はセッティングだけで11時間くらいかかったのですが、今回は3時間くらいでできたのも驚きでしたね。
今の東京でしか得られない体験
─センサーを感知するカメラは、どこに設置されていたのですか?
小谷 T40という高解像度カメラをお客さんの上の天井に10台設置して感知しています。そこでキャプチャーした座標のデータを、インタラクティブに動かすことができるVirtoolsというソフトに取り込みました。そこでオペレーターの方がゲームパッドを使って動かし、その出力をビデオ信号に変換して VJのミキサーにつなぎ込んでいます。
池田 今回はW+K Tokyo LabのVJチームが3人入っていて、その1人が映像を見ながら操作しています。アーティストの演奏に合わせて、スクリーン上でキャラクターも演奏するわけですが、カメラ位置がギュイーンと3次元に寄ったり引いたり。それをジョイスティックでリアルタイムに操作しているんですよ。
五十嵐 アーティストも帽子をとってみたり、楽しんでいるようでしたね。
小谷 3Dなので、奥行き感を考えながらVJをするわけですね。5年前は、3次元空間上での動きや演出を既存素材で対応したのですが、今回は新たに作り込みました。
─専用のライブラリを作るわけですか?
小谷 言ってしまえば、専用のビジュアルゲームを作って、モーションキャプチャーでとらえる人間の動きと、VJ側のゲームパッドの動きを入力デバイスにしているわけです。インタラクティブなツールが複数あるという感じです。
─いくつくらいの仕掛けを作ったのですか?
高橋 いや、相当な数ですね。2週間くらいで制作しました。
小谷 先ほど、パッケージ制作のお話で、ブログでのインスピレーションでアーティスト同士のモチベーションが上がるという話を伺いましたが、僕たちも同じ。彼らが持っているセンスを裏切れないと思って、ドライブさせられるんですね。彼らが内包しているセンスに感化されながら、それに答えるような技術。僕たちはエンジニアの集団なので、アーティスティックなものが作れるわけではないですが、エンジニアの集団として出さなければいけない部分を、うまく引きずり出されるような企画でした。エンジニア的なことをアーティスティックにかみくだいていくので、面白かったですね。
─最後に、今後の展開を聞かせてください。
松尾 パッケージとライブでは、また違ったとらえ方になりますし、必ず新しいものを何か入れていこうと思っています。今回のライブではモーションキャプチャーとLED。暗い中でのLED演出もインパクトがあったと思うんですね。そういう形で、新しいテクノロジーを使いながら見せていきたいと思っています。
池田 このイベントをきっかけに、ライブイベントを定期的にやっていきたいと思っています。音楽と映像、最新のテクノロジーを融合させて、今の東京でしか得られないエクスペリエンスを作っていきたいと思っています。

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