moonlinx

next creation and communication moonlinx magazine

HOME

  • HEADLINE
  • SELECTED EVENTS
  • SPECIAL ISSUE
  • INTERVIEW
  • VISUAL FEATURE
  • REVIEW & RECORD

INTERVIEW

+ART

  • ←
  • ↑
  • →

FILE.019 (02/26, 2009) iPhone/iPodTouch app from Delaware - Delaware

世界一(!?)小さな音楽レーベルは、どこにあるか知っているだろうか? その答えは、iPhone/iPodTouchの中に。「音楽をデザインする、デザインを音楽する」グループDelawareが、iPhone/iPodTouch用の自作アプリを楽曲発表のインフラとしたレーベル、Re<ordsを設立した。レコードの盤面がくるくると回るこのアプリは、本体をひっくり返してA/B面を再生させるほかスクラッチもできるなど、レコード好きにはたまらないインターフェースが魅力。既存の楽曲をかける「プレイヤー」ではなく、回る盤面のデザインと楽曲があって初めて一つの作品となる独自の世界観が新しい。2009年2月現在、Delawareの楽曲が収録された2作品が公開されているが、今後もこだわりの作品が発表される予感。サマタマサト氏、Ages5&upとしても活躍する岡村浩志氏に聞く。

Text:Nahoko Emi

町の八百屋さんのように、自分の作品を売りたかった
─まず、Delawareが音楽、グラフィックデザイン、インタラクティブアートなど、さまざまなジャンルにわたって作品を発表し続けてきた理由をあらためて教えていただけますか?
サマタ やはり目にするものと耳にするもの、両方に興味があったんですよね。立花ハジメさんのオーディオ・ヴィジュアル・ショー「AVライブ」を目の当たりにしていて、かっこいいなと思っていたりして。そもそもミュージシャンにもデザイナーにもなる気が無かったし、今もその意識は無いんです。じゃあ何だと言われたら難しいんですけど(笑)。
最新リリースの第3弾「Re<ords 003_A side:SPACE SPA/B side:HOMETOWN」のアートワーク。 アーム部分にはサーフボードが施されているほか、盤面はキラキラとした光を放つなど"本物"には無い立体的な質感が素敵。230円。
─「音楽をデザインする、デザインを音楽する」とありますが、音楽の中にあるデザインとは?
サマタ 考え方、アティテュードみたいなものを感じる部分かな。
―アートワークとかそういう意味ではないのですか?
サマタ もちろん、そういう意味です。でもそのアートワークが単純に視覚だけ、聴覚だけの作品はあまり興味が無いかもしれない。例えば、聴覚を通して別のところを刺激してくれたりするものじゃないと。
─デザインにも、例えばドットの並びにリズム感のようなものを覚えることはありますよね。
サマタ それこそジェームス・ブラウンのビート感と同じような感覚の映像を作りたいと思うこともあります。何かが共鳴しているというか、音楽をやってもデザインをやっても、その何かを感じてほしいというか。
岡村 例えばいいフレーズやテクニックがあっても、それだけのものには興味が無いんですよね。それは音楽だけじゃなくてデザインも同じです。
─今回の作品は、音楽の新しいパッケージとして発表したということですよね。最近ではアプリをCDや音楽配信のプロモーションとして販売している例は聞きますが、直球勝負で面白いです。
サマタ (世の中に流通する音楽や書籍は)レコード会社や出版社の経済理念や趣味志向で決まるわけでしょう。それに納得できているうちはいいけれど、そうでなければスキップして自分たちでやりたい。アートやデザイン、ミュージックというえらそうなことではなくて、町の八百屋さんや魚屋さんのように、自分の作品を売りたかったんですよね。そこへ、作品を出品できる世界的なマーケットができた。…それがApp Store。自分の作品を自分で売って生活するというカントリー・ライフに、デジタルの世界で肉薄しているというか。それからワールド・ディストリビューションができるということ。ビジネスは国単位の規制で成り立っているけれど、これは軽くその部分を食い破ってくれる。東京で買うのと、キューバで買うのとでは価格は少し違うけれど基本的には同じでしょう。そこがすごく魅力的。どんな表現ができるかという以前に、そのインフラに興味がありました。
新しいデバイスで感じる音楽の楽しみ方、時間の過ごし方
─ビジュアルとしてレコードをモチーフにしようと思ったのはなぜですか?
岡村 僕らはレコードの楽しみ方を知っている世代。古いかもしれないけれど音楽を聴きながらジャケットを見るという「音楽とビジュアルの関係」や、レコードを聴いているときに寝てしまって、気付いたらレコード・ノイズがずっと鳴っていたときの心地良さみたいな、そういう音楽の楽しみ方や時間の過ごし方を、 iPhoneやiPodTouchという新しいデバイスでも感じてもらえたらうれしいなと思いました。
サマタ 例えばMTV的な絵を作って音楽を流すこともできたと思うんですが、そうはしたくなかったんです。それだと音があまり耳に入ってこないから。そこでレコードが最適だと思いました。波や噴水と同じで、あるようで無い…そういうビジュアルが良かった。といっても来年くらいには、めちゃくちゃビジュアルが目に入ってくるような作品を作るかもしれないけれど、今はMTV的な手法は好きではないんです。後は、続けられるということ。一つの音に合わせたビジュアルだと、何回も繰り返せないですよね。岡村君と一緒にやることで面白いのは、「仕組み」を作ってくれるところ。あらかじめ用意したマイ・カンヴァスの上で新しい音楽やグラフィックを作っていくようなやり方をしたかったんです。
─岡村さんは2007年にDelawareに加入されたそうですね。
サマタ 実は出会ってからは10年くらい経ちます。2004年に「Designin' in the Rain」という本を出したのですが、それにCD-ROMを付けてほしいと出版社から言われ、彼にプログラミングを手掛けてもらいました。今回もプログラミングを中心に、レコード・ノイズを入れたり、ボーカルを担当してもらったりと、サウンド面もやってくれています。
─スクラッチができたり、本体をひっくり返すことでA/B面をチェンジさせたりなど、細かな仕様はどのように決まったのですか?
岡村 ミキサーやスライダー、スイッチなどがたくさん付いているデザインは、あまり粋ではないと思っていました。ターンテーブルの上で回転する絵を見続けることがメインなので、黒バックにして、スリップマットも必要無い。ただしアームは、曲がどこまで進んだかを確認できるという、機能とデザインの両方を満たすものなので必要などと考えていって。本物のレコードを完全に再現したらいいというわけではないんです。
サマタ DJツールというよりは、やっぱりレコードプレーヤーだよね。スクラッチもできるけれど、それが前提のマシンじゃない。
同じく3月リリース予定の第4弾「Re<ords 004_Palm & Fingers Spin Art Gallery」はギャラリー的に展開するとのこと。番傘のイメージにフィールド・レコーディングした雨の音を組み合わせるなど、よりビジュアルとサウンドが接近した作品が魅力。9面収録。350円。
YouTubeでスカウト活動をしてみようと思っています
─アプリに収録した楽曲のセレクトはどのように?
サマタ 昔のDelawareの曲もありますし、新しく制作した曲もあります。その辺はあまり気にしていないですね。
─最近は自宅録音やリハスタで録音した楽曲が多いと伺いました。制作にはどのようなツールを使っているのですか?
サマタ ものすごく簡単な音楽制作ソフトです。MACROMEDIA SoundEdit ProというOS Xでは動かないようなソフトなのですが、これがすごく楽。もう誰も使っていないと思うのですが、僕には、作家が原稿用紙に執筆するくらいの感覚までなじんでしまって。
岡村 昔のMACROMEDIA Directorにバンドルされていて、8ビット/22kHzなどの時代に効果音の編集ツールとしてポピュラーだったソフトなんですけどね。だから効果音を作るのかと思っていたら、それでバッチリ音楽を作っていて(笑)。
サマタ 岡村君は、バカにしないで付き合ってくれるところがえらい(笑)。でも、やたらと高機能だとそれに埋もれてしまうような気がしています。
岡村 作家が原稿用紙に書く感じと言っていましたけれど、今のツールだと、いきなり製本された状態で音楽を作るような状態なんですよね。それだと考えることが多過ぎる。作るときには作るだけ、編集するときには編集するだけのことを考えた方がいいのに、今のツールは全部一度にできるようになっているので、触るところが多過ぎるんです。SoundEdit Proは低機能ですが、必要な機能は満たしている。音もピッチを変えたりディレイをかけたりしたときの感じが独特です。
─制作の仕方も発表の場も、とても自由ですね。
サマタ 世の中にはいろいろなルールがあって、それは守らなきゃいけないと思っているじゃないですか。もちろん信号などは守らなければいけないと思うけれど、でも制作は守らずにルールを作った人がイノベーターになっているわけですよね。僕はルールを順守して素晴らしい作品を作ろうとは思わない。今のデザインのルールもよく分からない。昔は譜面が読めなければミュージシャンではなかったけれど、今は譜面が読めなくても曲を作ることができる。時代、時代でどんどん変わるから、そこには敏感でいたいと思います。
─ほかのアーティストの楽曲をRe<ordsから発表することは考えていますか?
サマタ YouTubeでスカウトしようかなと思っています。この間、18歳くらいの女の子が海岸でウクレレを弾きながら歌っている動画がアップされていたんです。波の音が入るから、すごくいいの。レコーディング・スタジオに入って、きっちりお腹から声を出してピッチを合わせて歌ったものより、素敵だなと思って。メールで「こういうことやりたいから参加しない?」と、インターネット上でスカウト活動をしてみようと思っています。
撮影協力:KONOSKe BAR
Delaware
Delaware

WEBSITE: http://www.delaware.gr.jp/

1993年、サマタマサトにより結成。音楽やグラフィックデザインのほか、ウェブや携帯電話を使用したインタラクティブ作品、独自のビットマップ表現が美しいクロスステッチ、さらに小説の執筆など、世界を舞台に幅広い作品を手掛ける。2009年3月にはカタールで開催されるデザインカンファレンス「Mousharaka / Icograda Design Week in Qatar」にゲスト・スピーカーとして出席予定。



「Re<ords 002 - A side: I WANNA BE YOUR STAR / B side: 3 FREEWARES」


SPECIAL ISSUE

季刊を基本とした moonlinx の特集

もっと見る

+ART

文化の背景と未来を読み取るロングインタビュー

もっと見る

NotSame.

クリエイターによる紹介制リレーインタビュー

もっと見る

VISUAL FEATURE

文化や社会をきりとるビジュアル記事

もっと見る

REVIEW & RECORD

クリエイター達による商品レコメンド

もっと見る

EDITOR'S NOTE

編集スタッフがつづる、編集/制作裏話、日常

もっと見る