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FILE.028 (11/27, 2009) 大怪獣バトル ウルトラ銀河伝説 THE MOVIE / 岡部淳也 - 岡部淳也

初代誕生から43年。不滅のキャラクターとして愛され続けてきた「ウルトラマン」の新たな伝説が幕を開ける。ハリウッドや日本映画界のトップクラスで活躍するスタッフが結集した劇場版最新作「大怪獣バトル ウルトラ銀河伝説 THE MOVIE」。フルCGで作成された異星の風景や巨大な建築物の数々、スピーディなワイヤーアクションと、ハリウッドのSFアクションヒーローさながらのその映像は、子ども向けコンテンツの常識をはるかに超越したものだ。円谷プロダクション副社長の就任から2年、本作でプロデューサー/脚本/ビジュアルスーパーバイザーを務めた岡部淳也氏に、驚異の進化を遂げた「ウルトラ最新作」の制作プロセスや、未来への構想を伺った。

Text: Sumiko Kodama

世界水準を目指して進化した日本製アクションヒーロー
─ 『ウルトラギャラクシー 大怪獣バトル THE MOVIE』を拝見しまして、まずその映像表現に驚きました。背景をとっても戦闘シーンをとっても、ハリウッドのSFアクションヒーロー映画に匹敵するクオリティと規模ではないかと。
今回は地球のシーンは一切出てきません。主な舞台となるのは、ウルトラマンの故郷「M78星雲 光の国」。ということは、ほぼ全面にわたって実在しない絵を描くしかない。背景は宇宙船内のセットを除いてすべて、実写キャラクターとCGのデジタル合成です。もちろんこれまでのウルトラマンもCGは取り入れていますが、今どき特撮ものでCGなんて当たり前ですからね。ただ、そこに従来の実写背景を混ぜてしまうと──日本だとロケの制約もありますから、どこかの空き地でアオリで撮るなどの工夫をしても、どうしてもチープさが出てしまう。それをさけるため、役者にはすべてグリーンバックで芝居してもらいました。
─例えば荒涼とした星の大地で戦う場面が出てきますが、やはり背景はCGなんですよね。あのシーンなどは、“地球上”のどこかでも撮影が可能かとも思われましたが。
予算やスケジュールの問題もありましたが、それ以前にこれは僕の持論として、日本人ってインハウスで作るものではミラクルを成し遂げるんですよ。たとえば漫画にしろ、アニメにしろ、ゲームにしろ海外で評価されるものってだいたいインハウス系ですよね。特にビジュアル的なものは。では実写はどうかと言うと、どうしても日常的な、悪く言うと安い絵になってしまいがちなところがある。限られた予算の中で密度の高い作品を作るためには、そして日本人の特性を生かして世界水準を目指すには、やはりフルCGがいいという結論に至ったわけです。
─また、本作は円谷プロダクションがTYOグループ(映像関連企業の複合体)に参画後の第一作で、クリエイティブのスタッフも一新されたとのことですが。
監督は米国「パワーレンジャー」シリーズの坂本浩一です。ウルトラマンは基本的に地上戦ですが、ワイヤースタントなどの今風のアクションシーンを全面的に採り入れるには彼しかいないと、仕事場のニュージーランドまで呼びにいきました。造形関係は品田冬樹。元部下だったんですが、怪獣造形に関しては日本随一ですよ。CGクリエイターも業界のトップクラスたちを呼んでいます。
─岡部さんのドリームチームとも言うべきスタッフが結集したわけですね。
そういうと気恥ずかしいですが、だいたい元部下だったり、一緒に仕事した仲だったり、よく戦争映画であるように昔の仲間を呼び集めた感じですね(笑)。今回は音楽にもかなりこだわっていて、音楽はマイケル・バータ。打ち込みだけでフルオーケストラを作れる珍しい人です。音場設定は「スターウォーズ」新3部作や「28日後...」などを手がけたショーン・マーフィが担当してます。改めて言うまでもありませんが、映画において音楽というのは非常に大切で、今回はハリウッド的なスケール感を出したかった。ですから絵作りも、これに壮大で重厚なオーケストレーションが乗るんだ、と常に意識して進めました。
─日本における特撮モノというと歴史はあれどやはり子ども向けというイメージがありましたが、本作はそんな固定概念を超越している感があります。やはり大人も納得できる作品を作りたいという思いはあったのでしょうか。
いや、子どもだとか大人だとか以前に、お客さんはそれなりの入場料を払って映画を観に来てくれるわけですよ。だったら映像もシナリオも、プロとして完成度の高いものを目指すのは当たり前です。子ども向けだからこの程度でいいだろうとか、昔からの一定のファンが観に来てくれるから大丈夫とか、それはすべて怠慢に繋がるわけです。昔のウルトラマンだって、設定やストーリーなど非常に緻密だったし、当時あそこまでハイエンドな特撮をテレビで毎週放映するなんて常識じゃ考えられないことだった。全力の制作者たちがいたからこそ子どもが感動して、40代、50代になっても熱烈なファンで居続けるんです。
スピーディなアクションで子どもの目と心に訴求
─岡部さんは本作で脚本も担当されています。悪のウルトラマンやウルトラセブンの息子の登場といった新たなトピックもさることながら、歴代ウルトラ兄弟や大怪獣の勢揃い、ついに明らかになる「光の国」の風景など、ウルトラ43年の歴史もまた本作に凝縮されていると感じましたが。
ウルトラの歴史は徹底的に再検証しました。「光の国」というのはこれまでほとんど本編には登場しませんでしたが、実は金城哲夫さんという第一期ウルトラシリーズを企画した方によるデザインはあったんです。結局、昔からのファンを納得させるには、そうした原案を、設定に忠実にブラッシュアップして、しかも今の技術で映像化するほかありません。
─ほかにもオールドファンの胸を熱くさせる仕掛けは、どんなところに盛り込まれているのでしょうか。
因縁の対決があったり、かつての仲間怪獣が揃い踏みしたり、消息不明になっていたキャラクターが現れ、颯爽とピンチに駆けつけたりします。登場怪獣には、それぞれ力で押し切るタイプ、技を駆使するタイプなど、過去設定に忠実な個性を監督がつけてくれました。他にも、ウルトラの父と母の若き日の描写があったり。おかげで試写では50代とか上の世代にもすごく評判がいいですよ。
─そういった緻密に組み立てられたものである一方、子どもがついて来れないような複雑さは感じられません。また大人にとっても、シンプルさゆえの爽快感が味わえる作品だと感じましたが、その辺のバランスはどのように計算されたのでしょうか。
最近って特撮でもアニメでも、ヒーローも実は悩みを抱えていて、とか、敵も悪いばかりではなく理由があって、とか何かゴチャゴチャしたのが多かったじゃないですか。よく出来ていても、はたして小さい子どもに、そういう勧善懲悪でないもの、一種相対的なマニアの価値観を見せて楽しんでくれるのか。本当に理解できるのか。小さい子はやっぱり、銀色の大きいヒーローと茶色のしっぽが生えた怪獣が戦うのが好きなんです。だから本作は内容はシンプルに、展開はノンストップ、目を飽きさせない映像作りという面でこだわりました。アクションものを見慣れない人は疲れるかもしれない。濃度がかなり高いですからね。
ウルトラマンメビウスが夕陽を背に戦う冒頭のシーンを大解剖。
ひとつのシーンにいくつものCG映像が重ねられていることがわかる。
グリーン バックでメビウスを撮影。
破片を作成
※メビウスが地面に足をつくたびに大地が割れ、破片が飛び散る。細かいながらも、メビウスの巨大感、重量感を表現する重要な構成要素。
夕陽と荒野の雄大な背景もCGで作成されたもの。
ウルトラマンメビウスのシルエットも別の画像が用意され、
合成されている
(c)2009 「大怪獣バトル ウルトラ銀河伝説」製作委員会
最新技術で各国バージョンのウルトラマンが誕生!?
─映像技術の革新や壮大な物語構想など、本作はまさにウルトラ伝説の新章の幕開けとして位置づけられると思います。そしてここから未来に繋げるには、やはりビジネス面での成果も避けては通れませんが、興行以外にどのようにコスト回収をされるのでしょうか。
現状、特撮ものというのは基本的に玩具メーカーがスポンサーとして存在しないと成立しなくなっています。特撮の黎明期は逆で、玩具メーカーが人気のあるキャラクターを玩具化していたんですが、今や逆転して、オモチャで売れるようなキャラクターやアイテムを映像作品化する、という流れが一般的です。制作者にとってはスポンサーの意向を考慮しなければならない局面が多々出てくる。ですが、各方面からの意見を反映したり、紆余曲折を経た末に生まれたヒーローは、作り手の思いの濃度が薄められている分、絶対的なパワーが宿りにくい。事実、黎明期のウルトラマン、仮面ライダー以降は、それに匹敵する長寿ヒーローシリーズって戦隊ものぐらいしか生まれていないんですね。もちろんこうした構造自体を否定するわけではありません。これで経済として回っているところもありますから。だけど作り手は、そろそろ次のステップに行かなきゃいけない。
─次のステップとおっしゃいますと?
クリエイティブとして魅力的な新ヒーローを作るには、経営面でも先に進まなければならない、ということです。たとえば、削られる一方の制作予算を、自分たちでもなるべく確保するように動く。それが結局、スポンサーサイドにとってもプラスになるはずです。だから今度、うちで「怪獣工房」というレーベルを作ったんです。怪獣工房というのは、円谷プロが撮影で使う怪獣スーツを制作する工房のことです。そこで制作したフィギュアやトイ、本物のレプリカなどを販売します。撮影用ゴモラの東部の複製を30コ限定で、とかね。
─それは完全にコレクター向けアイテムですね。
買うのは怪獣マニア、売る数も少ないからたいした商売にはならないですけどね。だけど僕は、一般層というのは余熱で動くものだと思うんです。「エヴァンゲリオン」だって最初はコア層が騒いだものだったでしょう。そのコア層が起こした熱が、地熱のように一般層に伝播して、あれだけの大規模ヒットになった。「怪獣工房」でもまずそういった熱を起こしたいんですよ。あんまり慌てず、時間をかけて。そういったプロセスで「怪獣工房」のブランド力が高まっていけば、たとえ一般層・ファミリー層向けの安価なソフビ人形でも、そのブランド商品であることが、「品質や企画力を保証するもの」として強い訴求力を持つようになる。
─そうやって資金を回収し、制作予算へと還元することが、次回作のクオリティに繋がるということですね。ところで先ほど、本作は「世界水準を目指した」とおっしゃっていましたが、やはり世界配給を視野に入れているのでしょうか。
そこはまだ明言できません。ただ、どんな作品でもそうですが、お金を払う人がいないとコンテンツ作りは続きません。「ウルトラマン」43年の歴史を支えてくれたのは子どもたちですが、この国は少子高齢化でどんどんお客さんは減っていく。としたらどうすればいいか。答えは単純で、子どものいる国に持って行けばいいんです。ただ、子どもは特に登場人物が自分と同じ国民かどうかってことが、共感性の面で非常に大事だと思うんですね。そこで今、僕らは「ビジュアル・トランスレーション」という、役者を差し替えたバージョンを作るプロジェクトを立ち上げています。
─つまり地球人や変身前のウルトラマンを、その国の役者が演じているという?
そうです。役者が出てこない特撮パートはそのまま使い、役者パートは相手国で作り直す。制作費はその分押さえながら、販売エリアを広げていく。販売エリアが広がれば回収の規模はもちろん、次の作品の予算は各国との共同出資で、という話にもつながっていく。そうすれば、より大きな予算を作品づくりに回せる。ビジネスのフィールドが拡大していくと同時に、クリエイティブの現場にも力と余裕を持たせることができる。
─「ウルトラマン」というコンテンツを未来につなげるために、世界に視野を向けているわけですね。
ゆくゆくはその国の子どもが、ウルトラマンが日本から来たものだってことを知らないというくらいになればいいなと。特撮だって車とか家電みたいに輸出産業になればいいと思ってるんです。そんなビジネスめいたこと言ってると、「ウルトラマンは愛と正義のヒーローじゃないのか」とか言う人もいるけど、やっぱり予算など余裕のある状況じゃないと、本当に愛情めいたものは作れないですよ。愛とか正義とか、それは作る側の心の中に当然として持っていなきゃいけないものであって、ビジネスや手間を回避する方便にしちゃいけないんです。
プロデューサー/脚本/ビジュアルスーパーバイザーを務めた岡部淳也氏
岡部淳也
Junya Okabe

WEBSITE: http://www.ultra-legend.com

「大怪獣バトル ウルトラ銀河伝説 THE MOVIE」
監督:坂本浩一
プロデューサー・ビジュアルスーパーバイザー:岡部淳也
脚本:岡部淳也、樫原辰郎、小林雄次
撮影:古谷巧
美術:大澤哲三
編集:今井大介
音楽:マイケル・バータ
配給:ワーナー・ブラザース映画
出演:南翔太、黒部進、森次晃嗣、小西博之、上良早紀、俊藤光利、八戸亮、つるの剛士、五十嵐隼士
声の出演:宮迫博之、宮野真守、団時朗、高峰圭二、真夏竜、蝶野正洋、西岡徳馬、小泉純一郎


12月12日(土)より全国公開
http://www.ultra-legend.com


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